Forbes JAPAN 2025年5月号は「新・ヒットの研究」特集。世の中で今、注目されている商品には、最先端のエッセンスが詰まっている。爆発的ヒット作の徹底分析と、次に来る消費トレンドの予測を通じて、これからのヒットの法則を探った。
発足から3年で大ヒットが次々と生まれ、人気急上昇中のアイドルプロジェクト。その裏には日々、人と向き合うことで洞察を得る、新しいプロデュースのかたちがあった。
2025年2月22日、およそ2万人のファンで満員となったKアリーナ横浜。光るペンライトの海を目の前にライブを繰り広げるのが、FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREETという4組の女性アイドルグループからなるプロジェクト「KAWAII LAB.」のメンバーたちだ。その発足は、22年2月。約300人が入るライブハウスからスタートし、わずか3年で大きな飛躍を遂げた。
同プロジェクトを手がけるのは、きゃりーぱみゅぱみゅや、最近では新しい学校のリーダーズの活躍が目覚ましい芸能事務所のアソビシステム。22年4月にデビューしたFRUITS ZIPPERは、同じ月に配信を開始した2ndシングル「わたしの一番かわいいところ」がZ世代を中心に大きなバズを生み、25年3月現在、TikTokでの再生回数は30億回超、MVは約4800万再生に達している。ライブの観客動員数を急速に伸ばし、25年8月には最大3万7000人収容のさいたまスーパーアリーナで、2デイズ公演が控える。4組目として24年8月にデビューのCUTIESTREETも、SNSでのバズを契機に人気に火がつき、デビュー半年で開催された1stワンマンライブは、約3000人収容の会場のチケットが即完売。さらにCANDY TUNE、SWEET STEADYも、SNSを中心に話題を集め、その人気を加速させている。
これらのグループをプロデュースするのが、KAWAII LAB.総合プロデューサーの木村ミサだ。アソビシステム代表取締役の中川悠介からの打診を受け、構想が動き始めたのは21年のこと。当初、これだけの短期間で各グループがヒットする姿は想像していなかったというが、彼女の話からは、従来の手法とは別の新しいプロデュースのかたちが見えてくる。
あえてコンセプトは固めない
もともとアソビシステム所属のタレントとして、モデルやアイドルの活動の経験をもつ木村。所属したグループの活動は順風満帆とはいかず、「アイドルとマネジメント、片方ががんばってもうまくいかない。ファン
の方々も含め、みんなで足並みを揃える必要がある」という強い意識をもっていた。この経験から、KAWAII LAB.のプロデュースにあたっては、自らの考えを打ち出すのではなく、かかわる人たちとのコミュニケーションをアイデアの源泉にしている。「メンバーもそうですし、社長やマネージャーの意見も聞きます。その意見についてしっかり考えて、取り入れることもありますし、自分が違うと思うときには、その理由を伝えながら話して納得してもらっています」
徹底的に人と向き合うことで、活動内容や方針を決める──。これはKAWAII LAB.というプロジェクトのあらゆる面に通底している。これまでのアイドルプロデュースでは、明確なコンセプトをもとにグループを立ち上げ、最初からマスメディアの力を使って知名度を高めるというアプローチが主流。一方、4組のグループは、立ち上げ時にはコンセプトをあえて固めていなかった。元気はつらつなCANDY TUNE、可憐で凛とした印象のSWEET STEADYなど、各グループの色が異なるのは、結果的なものだという。