北米

2025.03.21 12:00

米経済に「トランプ不況」の足音、FRB利下げ見送りで強まる悲観論

スコット・ベッセント米財務長官とドナルド・トランプ米大統領(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

消費支出の鈍化と金価格の高騰

直近で最も懸念されるシグナルの1つは、米国人の経済に対する信頼が揺らいでいることだ。ミシガン大学が14日発表した3月の消費者信頼感指数の速報値は57.9と、約2年半ぶりの低水準を付けた。これに連動する形で消費支出も減少傾向にあり、国勢調査局が17日に発表した2月の小売売上高は、前月比0.2%の増加にとどまった。この増加幅は、エコノミストの予測の0.6%の増加を大きく下回った。

さらに、世界で最も重要なコモディティである金と原油の価格も、世界的な景気後退の可能性を示している。金の価格は、安全資産への逃避が進む中で、年初から10%以上も上昇している。一方、原油価格の国際指標であるブレント原油価格は今月、2021年以来の最低水準に下落した。これは、世界的な経済活動の鈍化によって、原油需要が減少するとの見方が強まったことの表れだ。

FRBは利下げ見送り

ベッセント財務長官とトランプ大統領は、金利の引き下げを強く望んでいるが、金利は政治的に独立したFRB(連邦準備制度)が決定するものであり、通常、大幅な利下げは経済危機の際にのみに行われる。金利を引き下げることで、企業や家庭が借り入れを増やし、経済成長を促す効果があるが、同時にインフレのリスクが上昇する。

ゴールドマン・サックスの米国チーフエコノミスト、デビッド・メリクルは16日の顧客向けメモで、「FRBは、関税政策の行方がより明確になるまで利下げを見送る可能性が高い」と述べていた。FRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)は19日に開いた定例会合で、主要政策金利の据え置きを決定した。

EYパルテノンのエコノミストであるリディア・ブサーは、「経済の基盤にひびが入り始めている」と17日にコメントした。「消費支出が完全に減少に転じるとは考えていないが、景気後退のリスクは高まっている」と彼女は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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