4. 人によって適切なバランスは違う
バランスを定義する方法に良し悪しはなく、あくまで個人的なものだとソーヤーは強調する。起業家にとっての適切なバランスは、子をもったばかりの父親にとってはそうではないだろう。違っていて当然だ。「だからこそ、他の人が何を必要としているかを決めつけず、本人に直接尋ねることが何よりも大切なのです」
グラバレックも同意見だ。「人々が一番やってしまいがちな間違いは、自分のバランスを他の人のバランスと比較することです。スタートアップの創業者は、長時間勤務と要求の多いプロジェクトに達成感を覚えるでしょう。新米の父親は仕事上のコミットメントから距離を置き、家庭にフォーカスする時間が欲しいでしょう。リモートワーカーは、不規則なスケジュールのなかにバランスを見いだせるかもしれませんが、オフィスワーカーは仕事と私生活の線引きが必要かもしれません」
ウェルビーイングとキャリア成功につながるバランスのために
ワークライフバランスについて留意すべきは、ひとつにまとまった厳格なルールに従うことが重要なわけではないことだと、グラバレックは忠告する。
「自分にとって活力につながり、集中でき、達成感が得られるやり方は何なのかを見つけ出すことが大切です。自分なりの方法でバランスを定義して定期的に見直し、ほかの誰かではなく自分に合ったやり方を貫きましょう。そうすれば個人としてのウェルビーイングと、仕事における成功の両方につながる、持続可能なアプローチを構築できるでしょう」
ビジネスリーダーがポジティブなチームカルチャーを提唱しようとするとき、外部に理想はないと理解しておくことが重要だと、グラバレックは主張する。またソーヤーは、企業は画一的な方針を避け、柔軟で順応的なアプローチを取り入れ、個人のニーズを尊重すべきだと強調する。
「私たちの研究からは、リーダーが自身の仕事と私生活にきちんと線引きをしている場合、チームも感化されることがわかっています」と、ソーヤーは語る。「上司は、ワークライフバランスのロールモデルです。彼ら自身が境界線を維持できていなければ、部下もやがて境界線を無視するようになるのです」