1. バランスは自分で定義する
厳密な定義は忘れよう。大切なのは自分にとって何が適切と感じられるかだと、彼女らは主張する。「人々が犯す最大の失敗は、誰にでもあてはまるワークライフバランスの法則があると思い込んでしまうことです」と、グラバレックは説明する。「端的に言って、これは事実ではありません。バランスにとって大切なのは厳格な構造ではなく、自分自身が何をもってバランスが取れていると感じるかなのです」
グラバレックによれば、鍵を握るのは自分が「セグメンター(分離派)」か「インテグレーター(統合派)」かを知っておくことだ。セグメンターとは、仕事と私生活の間に明確な境界線を引くことを好む人を指す。彼らは決まった勤務時間を設定し、仕事用と個人用のメールアドレスを分け、勤務時間外には仕事から精神的に距離を取ることを重視する。
一方のインテグレーターは、仕事と私生活を分けず、夜に仕事のメールをチェックしたり、勤務中に私用の電話に出たりする。彼らのなかで、人生のふたつの側面は流動的に混ざり合っている。
「どちらかのアプローチが、より優れているというわけではありません。重要なのは自分がどちらのカテゴリーに属するかを知り、それに沿って自分のワークライフバランスを設計することです」と、ソーヤーは指摘する。
2. バランスは常に変化する
グラバレックは「多くの労働者が、自分なりのワークライフバランスを見つけ出したら、それが一生使えると考えています。けれど実際には、バランスは流動的なのです」と語る。
そして22歳の独身の頃に自分にぴったりだと感じたバランスは、35歳で3人の子どもを抱える頃にはまったく合わなくなっているかもしれないと説明した。
「キャリアを築き上げているさなかにはうまくいったやり方でも、個人としてのウェルビーイングを優先している時期には、切り替えが必要になるでしょう」と、同氏は述べる。「数日単位で考えても、締め切りや家庭の事情、個人の目標によって、バランスは違って見えるかもしれません」
このため、自分にとってバランスが何を意味するのかを、年単位、月単位、さらには週単位でも、定期的に評価することが欠かせないと、ソーヤーは説く。「労働者は、自分にとってバランスが何を意味するかを定期的に振り返り、その結果に沿って調整すべきです」と同氏は語る。「企業は、ワークライフバランスは固定的なものではないことを認識し、社員が変化する自身のニーズに合わせて、スケジュールや期待、成果を調整できるようにすべきです」
3. 適切なバランス達成には、内省が不可欠
ソーヤーとグラバレックは、自分がどんなときにバランスが取れていると感じるかに注目して、それを優先することが重要だと主張する。ソーヤーによれば、多くの社員は自身のワークライフバランスの現状に不満をもっているが、その理由をじっくり考えてはいないという。
もしバランスに苦労しているなら、いったん立ち止まり、今までで一番調和が取れていたときのことを思い返してみよう。そして、達成につながった習慣を再構築してみようと、ソーヤーはアドバイスする。さらに、そのプロセスに導くための3つの質問を挙げている。
・定時で家に帰るとき、バランスが取れていると感じるか?
・朝のワークアウトで、その日の調子が決まるか?
・エネルギーを再充填するために、夜に静かな時間は必要か?
ソーヤーによれば、セグメンターは退勤後に完全に仕事から解放されたとき、最もバランスが取れていると感じる傾向がある。一方のインテグレーターは無理にこうした境界線を引くと、落ち着くどころか、かえってストレスを感じることがあるという。