グリーンランドで発見された「最初期のストロマトライト」は、現在はもはや説得力のある生命の証拠とは見なされていないが、ヒックマン=ルイスによれば、イスアの堆積岩の層が形成されたころには、すでに生物圏が存在していたと推測されるという。その生物の直接的な証拠が岩石内部に保存されている可能性はある、とヒックマン=ルイスは述べている。
グリーンランドの微化石をそれと立証するのは、どれくらい難しいのか?
30億年前よりも古い、はるか昔の微化石の場合、それはとても難しいとヒックマン=ルイスはいう。高温高圧での変成作用は、構造的にも、化学的にも、有機物を分解する。つまり、グリーンランドにいた生物の痕跡を検出するのは極めて難しく、立証するとなるとさらに難しくなる可能性があるということだ。
別の有望な条件下でさえ、微化石はめったに見つからない。
グリーンランドの西にある、カナダのヌブアギトゥクなどの場所で見つかった、およそ35億年前よりも古い岩石には、変質の歴史があり、それが壊れやすい微化石の形状の保存を妨げている可能性がある。ハンガリー・ブダペストにあるコンコリー天文台の地質学者スティーブン・モイジーシュは、メール取材でそう説明した。
そして、我々がどれほど努力しても、グリーンランドの氷の融解は続いていくだろう。
二酸化炭素排出量が今後急速に減少するシナリオでさえ、グリーンランドと南極の氷の大部分が解けるのに合わせて、数千年間は海面が、とどまるところを知らずに上昇するだろうとビアマンは述べている。
氷床が解けたらどうなる?
米国立雪氷データセンター(NSIDC)によれば、グリーンランドの氷床は、世界最大の島であるグリーンランドの80%ほどを覆っており、170万平方kmにわたって広がっている。これは、テキサス州の3倍ほどの面積だ。
その氷が解けたら、極めて興味深い堆積岩が露出する可能性がある。つまり、地球最初期の生物の証拠が眠っているかもしれないものだ。だがその一方で、グリーンランドの氷床が融解したら、その結果として、地球の海面が7.4m上昇し、世界全体で数千万の家屋が水にのまれると予想されている。
グリーンランドの氷の融解は、どんな驚きをもたらすのか?
氷床はもろい。現在は、産業革命前より摂氏1.5度程度高い気温だが、それと同程度が続いた場合でも、少なくともグリーンランドの北西部、ひょっとしたらグリーンランドの大部分から、氷が消える可能性があるとビアマンは言う。
だが、答えるのが最も難しい疑問は残る。現在見つかっているものよりもさらに古い、はるか昔の生物の痕跡が、グリーンランドで見つかる可能性はあるのだろうか?
それはわからないし、そこになにが潜んでいるかは知りようがない。モイジーシュはそう話している。