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2025.03.19 08:00

「補助金に頼らない水素」を目指す米Graphitic Energyの挑戦

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クリーン水素は、多くの産業に電力を供給する可能性を秘めている。米国においては、バイデン政権時代に、水や再生可能な電力からクリーン水素を製造する企業に対する数十億ドル規模の補助金が設けられたことを受け、クリーン水素の生産への関心が高まった。

しかし、トランプ政権がクリーンな電力と気候変動政策の方針を転換したことで、これらのプロジェクトのいくつかは危機に瀕している。こうした中、カリフォルニア州サンタバーバラに本拠を置くスタートアップGraphitic Energy(グラフィティックエナジー)は、手頃な価格のクリーン水素と貴重なグラファイトを同時に生成する方法を開発したと述べている。同社は、連邦政府の資金援助を受けずに、それを可能にしたと主張している。

Graphitic Energyは、ビル・ゲイツのブレークスルー・エナジー・ベンチャーズなどの投資家から6500万ドル(約97億円)を調達している。同社の共同創業者でCEOのザック・ジョーンズによると、同社は比較的少量の電力で天然ガスから水素と炭素分子の1つであるグラファイトを抽出する方法を開発した。

Graphitic Energyは、従来の水素製造プロセスのように、そこから生じた二酸化炭素(CO2)を大気中に放出したり、地下に貯蔵するのではなく、グラファイトに変換して企業に販売する計画だ。1トン当たりの価格が2500ドル(約37万円)以上のグラファイトは、現状で主に中国で生産されている。

同社は、このテクノロジーを検証するために、テキサス州サンアントニオのサウスウエスト研究所にパイロットプラントをオープンする。Graphitic Energyによると、この研究所は政府の援助なしで建設されたもので、1日に400キログラムの水素と1000キログラムの合成グラファイトを製造できるという。同社の水素製造プロセスは、従来のものと比べてCO2排出量を90%削減することが可能で、順調に進めば、最初の大規模施設を2027年にオープンする予定だ。

水素は、宇宙に最も豊富に存在する物質であり、太陽の動力源でもあるが、安価でクリーンな製造方法を見つけるのは難しい。カーボンフリーのエネルギー源である水素は、鉄鋼や化学、アンモニアなどの生産をクリーンにする可能性を秘めている。しかし、現状では、ほとんどの水素が天然ガスと高温の水蒸気を反応させて製造されており、その過程で大量のCO2を排出している。

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編集=上田裕資

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