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2025.04.03 16:15

「文化を商いとする」400年続く和菓子屋 非効率であっても紡ぐ文化とは

──従業員の年齢層が高いことも、虎屋さんならではのSDGsといえますね。

うちは定年が75歳なので、従業員の年齢層は高いです。だいたい60代が4割、70代が1〜2割ですね。地方の労働人口の縮小は全国的な共通課題ですが、じゃあ若い人を入れる、という簡単な話でもない。地方のシルバー人材は結構元気な人が多く、働く場所を提供するとすごく頑張っていただけるんです。

何より、店や現場に「ベテランのおばあちゃん」がいるだけで、親しみやすさや安心感が生まれます。お客さんにちょっとおまけを渡したり、常連のお客さんとお茶を飲みながら話したり。都会と違って地域に根差したお菓子屋さんですし、地域とのつながりを担っているのは、人生経験豊富でコミュニケーションの上手な高齢者の方々です。

菓子を商うのではなく、文化を商う

そっくりスイーツのタコシュー※写真提供:株式会社虎屋本舗
そっくりスイーツのタコシュー※写真提供:株式会社虎屋本舗

──今後の会社のビジョンをお聞かせください。

プッシュ型の営業はもうやめています。そこに人を割くより、良い商品をつくることに力を入れています。父の代からやっている「たこ焼き」や「手まり寿司」に見える「そっくりスイーツ」などユニークな商品の開発も、職人さんは積極的に提案してくれています。

虎屋本舗の商訓に「他の商売には決して手を出すな」とあるため、業種をまたぐような新しい取り組みは考えていません。ただ、先ほどご紹介した神辺店のように、9つある店舗を順番に改装しています。

今年リニューアルした駅ナカの店舗は、畳を敷いたスペースで小規模なお茶会ができるようにしました。他に、お城の近くにある文化施設を借り、着物で国産ワインと和菓子を楽しむイベントを開くなど、店舗や商品に加え、和菓子に親しんでもらえる場を作っていきたいと思います。

ただ和菓子を作って商うのではなく、「文化を商いとする」というのが、会社の方針です。

都会と地方は、商売や事業承継が異なる

──最後に、高田代表は事業承継の在り方をどのように考えていますか?

地方の事業承継と都市圏の事業承継はちょっと意味合いが異なり、同じ目線では語れない気がします。都市圏では、スピード感やマーケットに対する考え方が地方と全然違う。

地域コミュニティや地元の特産品を大事にして、地域とともに歩むスタイルは、広島の瀬戸内におけるベストの形と考えています。

地方では、私と同世代の事業承継者に、わりと優等生タイプが多いです。基本的に先代の教えを守り、従業員と地域のお客さんを守っていく。ただ、自分なりに文化を新しくしたい気持ちはあるので、お客さんや世間がまだ言語化できてないニーズを汲んで、何かを創造して、初めて自分が継いだ意味があると思っています。

事業承継は、先代や社内との関係性だけで語られるものではなく、地元や地域コミュニティなど、もう少しマクロな視点で追求していくことかもしれません。


高田 海道◎1987年、広島県生まれ。早稲田大学政治経済学部を2009年に卒業後、不動産会社勤務などを経て、2013年に現在勤める株式会社虎屋本舗に入社。2021年5月18日、東京オリンピックの聖火ランナーを務めた日に十七代目当主に就任。「虎焼」をはじめとする伝統の和菓子を伝えるとともに、斬新な発想の新作菓子も数々世に送り出している。和菓子教室や、オープンキッチンを備えた新しい形の店舗など、地域コミュニティを意識した事業を展開。第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞」受賞。

(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の記事前編後編を編集しています。)

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