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サイエンス

2025.03.14 17:00

お手本は野生のオオカミ、第二次世界大戦で米独が採用した「群狼作戦」

BellStockPhoto / Shutterstock

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野生のオオカミたちは、残忍さと美しさを兼ね備えた正確さで狩りを行う。彼らは、純粋な強さだけには頼らない。チームとして協力して、暗黙のうちに意思を疎通し、互いの動きを読みながら、見事に連携して獲物に襲いかかる。

オオカミの戦略は、獲物を殺すことだけを目標にしていない。コントロールと策略、そして獲物が状況を察する前に圧倒することを目指している。

破壊力に優れたこうした効率性は、人間の軍隊の精神にも受け継がれた。第2次世界大戦中、ナチスドイツ海軍の潜水艦隊司令長官カール・デーニッツは、野生のオオカミが用いる狩りの戦術を、大西洋の海中で応用した。自ら指揮を執るドイツ海軍の潜水艦Uボートを組織的な群れのように動かし、連合国軍の艦隊にとって悪夢へと変貌させたのだ。

後に米国も、同じ戦術を太平洋で応用し、寡黙な捕食者と化した潜水艦を用いて、物資を運ぶ日本の船舶に大打撃を与えた。

オオカミが群れで狩るときに何が起きているのか

野生のオオカミの群れが、獲物に忍び寄っていく様子を思い描いてほしい。オオカミたちは、木々の間を影のように動き回る。それぞれが自らの役割を把握しており、獲物に攻撃を仕かけて逃げ道を防ぐオオカミもいれば、仲間が待ち構える方向へと獲物を追い込むオオカミもいる。動きや攻撃はすべて計算されたもので、エネルギーを一切無駄にせず、無謀に突進することもない。仕留めるときは素早くて正確だ。

単独行動であれば、なかなか仕留められない獲物もいるかもしれない。大人のヘラジカ相手なら、手こずるだろう。しかし、単独ではなく群れで行動するオオカミの場合はどうだろうか。ハイイロオオカミ4頭の群れなら、ヘラジカを確実に仕留めて、エサにありつけるはずだ。

だからこそオオカミは、単独行動の捕食動物が苦手とする場所でも生き抜くことができる。数を強みに、流れるように協調して、自分の群れの動きをほぼ本能的に理解する。これこそ、オオカミが自然界で最も効率的なハンターであるゆえんだ。

動物行動学の研究によると、オオカミの群れによる狩りは、集団的だが突発的なプロセスだ。その原動力となるのは、シンプルな分権化ルールだ。厳格な上下関係があったり、明確なコミュニケーションをかわしたりするわけではない。オオカミが獲物を見つけて忍び寄り、追跡し、取り囲むときは、仲間の位置関係を認識するだけでいい。リーダーがいなくても、チームワークが自然発生することの証しだ。

人間の軍隊がそこに着目したのは当然だろう。自然界ですでに完成されていた効率的な狩りの戦略が、「組織化された戦争」という混沌に取り入れられるのは時間の問題だった。

「海中のオオカミ」と化したUボート

Everett Collection / Shutterstock
Everett Collection / Shutterstock.com

ナチスドイツのカール・デーニッツ提督は、単独行動のオオカミと同様に、潜水艦1隻が単独で動いていれば、できることには限りがある、とわかっていた。もちろん、Uボート1隻でも、船1隻を沈めることはできるだろうが、逆に、潜水艦が単独行動していれば、いとも簡単に追跡され、破壊されてしまう。そこでデーニッツは、素朴な疑問を抱いた。潜水艦が群れになって狩りをしたらどうなるだろうか、と。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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