10歳になるかならないかの女の子たちがスキンケアに興味津々だと聞けば、健康的で楽しいトレンドに思えるかもしれない。商業的にも大きな市場となっていて、米国ではスキンケア商品の購入が2023年に6〜12歳の子どものいる家庭で27.2%、13〜17歳の子どもがいる家庭では28.6%増加した。
しかし、40代女性向けのアンチエイジング基礎化粧品を8歳そこそこの女児が使用し、アレルギーや発疹・皮膚炎を発症してクリニックを受診する事態が相次いでいるとなれば、社会問題だと言わざるを得ない。年端もいかない少女たちを駆り立てているのは「#SephoraKids」(セフォラキッズ)というSNSのトレンドだ。
問題は肌トラブルだけではない。このトレンドは、少女たちが自分の身体に対して持つ認識(ボディイメージ)にも、友達や仲良しグループの作り方にも影響を及ぼしている。
アンチエイジングコスメに夢中の少女たちとSNS
シワ改善に効果のあるビタミンA誘導体トレチノイン(レチノイン酸)や高い抗酸化作用をもつポリフェノールの一種フェルラ酸など、アンチエイジング成分を配合した基礎化粧品は接触性皮膚炎(いわゆる化粧品かぶれ)を引き起こすことがある。だが、そもそもシワひとつないみずみずしい肌をもつ8歳の女の子が、どうしてわざわざアンチエイジング製品に手を出すのだろうか?
入り口となっているのが「子どものスキンフルエンサー動画」である。スキンフルエンサーとは、SNSでスキンケアを専門に扱う美容系インフルエンサーのことだ。かわいらしい女の子たちのスキンケア動画を見て楽しみ、友達とその話題で盛り上がるうちに、深みにはまってしまう。この危険性に気づく少女たちも増えつつある。
新しいスキンケア商品を試すのが大好きだという15歳のエリーと14歳のノーイの姉妹は、テネシー州ノックスビルで放送された地方ニュース番組WATE 6に「楽しいし、いい気分になれるし、自分に自信が持てる。でも時々、調子に乗ってやりすぎてしまうこともある」と正直に語っている。
WATE 6のニュース動画が紹介している子どものスキンフルエンサーたちは、驚くほど幼い。
こうした女児たちのアンチエイジングコスメ動画をもう見たくないという少女もいる。スカーレット・ゴダード・ストラハンは10歳になったばかりの頃、将来シワができることが心配でならず、友達と一緒にTikTokやYouTubeでスキンフルエンサー動画を延々と視聴していた。そして、輝くような完璧な素肌を手に入れようと、洗顔料、ミスト状化粧水、保湿フェイスマスク、保湿クリームを愛用し始めた。
ところが、これらのスキンケア商品は子どもの若い肌に使用することを想定して製造されてはいなかったため、スカーレットの肌は化粧品かぶれを起こしてヒリヒリ痛み、水ぶくれができて何カ月も跡が残った。
「シワに悩んだり、老けて見られたりしたくなかった」とスカーレットはAP通信に告白している。「こんなにも人生が振り回されると知っていたら、こんなもの(アンチエイジングコスメ)を顔に塗ったりしなかったのに」