欧州

2025.03.07 09:00

ウクライナ軍のHIMARS、遠距離の攻撃が困難に 米国の情報遮断で

米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)の3Dイラスト図(Mike Mareen / Shutterstock.com)

米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)の3Dイラスト図(Mike Mareen / Shutterstock.com)

ウクライナ側が始めたわけではないロシアとの戦争を終わらせるようウクライナに一方的に要求しているドナルド・トランプ米政権は今週、ウクライナとの間で長く続けてきた情報共有を停止したと明らかにした。この断絶の影響はすでにウクライナ軍の米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)に及んでいる。

米紙ワシントン・ポストによると、ウクライナ陸軍でHIMARSを運用する砲兵部隊の少なくともひとつは、接触線から約65km以上離れた目標を攻撃するための座標を入手できなくなっているという(編集注:同紙の情報源であるウクライナ軍将校は、こうした位置情報を受け取れなくなったは1カ月ほど前からだとしており、情報共有の制限は2月28日の米・ウクライナ首脳会談や3月5日の米当局者による情報遮断発表の前から始まっていた可能性がある)。装輪式の発射車両から最大射程約92km、重量300kg弱の精密誘導ロケット弾などを発射するHIMARSを、ウクライナ軍は40基ほど保有している。

英誌エコノミストのオリバー・キャロル記者は5日、「米国はキーウ時間午後2時、警報のための重要な情報リンクを遮断した」と書いている。「それ以前にはHIMARSの目標指定データも。ウクライナは長距離攻撃のためのリアルタイム情報も受け取っていない」

HIMARSはほかの砲システムと同様に、目標を精確に攻撃するには、手動で計算するかGPS(全地球測位システム)の補助で導出する地図上のグリッド座標が必要になる。こうした位置情報は人工衛星やドローン(無人機)、無線傍受、双眼鏡を持った観測員などさまざまな情報源から入手できる。

米国がウクライナへの情報提供を遮断し始めたのと同じころ、ウクライナ軍のHIMARSが東部ドネツク州ポクロウシク周辺でロシア兵らが集まった地点を砲撃できたのもそのためだ。ポクロウシクに最も接近しているロシア軍部隊はこの要塞都市からほんの数kmしか離れておらず、小型のドローンですら観測できる範囲に入る。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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