欧州

2025.03.05 08:30

ウクライナの都市防空に危機 米国製パトリオットの代替難しく

パトリオット地対空ミサイルシステムの発射車両。2023年7月、リトアニア・ビリニュス(Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)

パトリオット地対空ミサイルシステムの発射車両。2023年7月、リトアニア・ビリニュス(Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)

ウクライナとその支援諸国はウクライナ軍の装備品で最も重要な米国製兵器の代替に奔走し始めた。米国のドナルド・トランプ大統領とJ・D・バンス副大統領が先週、ホワイトハウスの大統領執務室で記者団を前に、米国によるこれまでの援助に対する感謝が足りないなどとウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領を厳しく叱りつけるという、痛ましい首脳会談の結果を受けた動きだ。

その米国製兵器には防空ミサイルも含まれる。ウクライナが必要とするほかの兵器のほとんどは、自国で製造するか欧州の支援諸国から取得することが可能だ。だが、最も高性能な地対空ミサイル(SAM)やその発射機、レーダーはこれまで、世界の民主国家の間では米国がほぼ独占的に供給してきた。

それが変わろうとしている。ウクライナが戦い続けるつもりであれば、変わらなくてはならない。

米国で設計・製造された地対空ミサイルシステム、なかでもウクライナに6基配備されているとみられるパトリオットシステムは、ロシア軍の最も危険なミサイルなどからウクライナの主要都市を守っている。そのミサイルには、迎撃がきわめて困難な極超音速弾道ミサイルも含まれる。ノルウェーのビョルン・グラム国防相は「防空システムはウクライナが最も緊急に必要としているもののひとつ」だと指摘している

だが、トランプが憤激し、米国をロシアやほかの独裁国家に同調させるなか、ウクライナと欧州は米国の継続的な支援を当てにできなくなっている(編集注:トランプは3日、ウクライナへの軍事援助の一時停止を指示した)。ドイツのフリードリヒ・メルツ次期首相候補が、欧州に戦略的自立の達成を呼びかけているのは理由のないことではない。

ホワイトハウスでの惨憺たる会談からわずか2日後、ゼレンスキーは英ロンドンで欧州などの首脳との会合に参加し、ウクライナと米国を除く支援諸国が今後進むべき道筋について話し合った。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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