ナウルのゴールデンビザ制度を巡る過去の失敗
各国のゴールデンビザ制度を巡っては、投資の最高額を提示した人に国籍を「売る」手段だとの批判が高まるなど物議を醸しており、近年は多くの国が制度の廃止に向かっている。
たとえば、欧州では欧州連合(EU)圏外の国民が移住を希望する国で金融投資を行うことで、合法的な居住権を取得するゴールデンビザ制度を設けている国もある。欧州諸国のゴールデンビザ保持者には、市民権ではなく永住権が与えられる。
だが最近では、スペインがゴールデンビザ制度を通した外国人の不動産投資によって国内の住宅価格が高騰しているとして制度を廃止したほか、ギリシャも申請要件の厳格化に踏み切った。ゴールデンビザ保持者は、他の種類のビザで滞在している外国人に義務付けられる言語能力や最低居住期間などの要件を回避できることが多く、不公平だとの批判もある。一方、同制度は外部からの投資を呼び込み、外国資本の注入によって経済が潤うと賛同する声もある。
ナウルには、オーストラリアと交わした難民収容政策が失敗した歴史がある(訳注:オーストラリア政府は2001年、保護を求めて同国に流入する難民を近隣のナウルやパプアニューギニアに移送する取り決めを両国と結んだが、難民が収容先で劣悪な環境にあったことが発覚し、国際機関などから批判を招いた)。ナウルは過去にもゴールデンビザ制度を運用していたが、国際テロ組織アルカイダの工作員を含む犯罪者に悪用され、2003年に廃止に至った。ナウル政府はこの時も国際的な批判にさらされた。
アデアン政権は新たなゴールデンビザ制度を導入するに当たり、こうした問題を防ぐために法務担当官を任命するなど厳格な審査手段を設け、透明性と安全性の確保に努めている。新制度では、ロシア国籍者からの申請を禁止している。
気候変動の脅威が迫る中、ナウルのような小さな島国は、生き残るための資金を得るために抜本的な解決策を見つけなければならない。ナウルのゴールデンビザ制度は、気候変動対策に向けた経済的な生命線となることが期待されている一方、倫理的な懸念も生み出している。
同国のゴールデンビザ制度が気候変動の脅威にさらされている他の国々の模範となるかどうかは明らかではない。しかし、ひとつ確かなことは、海面に沈みゆく島国ナウルに残された時間は限られており、大胆な政策はもはや単なる選択肢ではなく、必要不可欠だということだ。