欧州

2024.02.22

ギリシャのゴールデンビザに外国人殺到 ミコノス島などで最低投資額を1.3億円に引き上げ

ギリシャ・ミコノス島の風景(Shutterstock.com)

ギリシャは今、不動産投資を通じて居住ビザを取得したい外国人投資家にとって、非常に魅力的な国となっている。「ゴールデンビザ」として知られるこうした制度を廃止する動きが欧州で広がり選択肢が狭まっていること、ギリシャ経済の復活、不動産購入の敷居が比較的低いことなど、複数の要因が重なった結果だ。

こうした中、ギリシャ政府はアテネ、ミコノス島、サントリーニ島、テッサロニキなど住宅需要の特に高い地域について、外国人のゴールデンビザ申請に必要な最低不動産投資額を80万ユーロ(約1億3000万円)に引き上げると発表した。

ギリシャが2014年に導入したゴールデンビザ制度は、25万ユーロ(約4000万円)以上の不動産投資を条件に、外国人に更新可能な5年間の居住権を認めるもの。欧州のシェンゲン協定加盟26カ国にビジネス・レジャー目的で自由な入国ができ、投資家本人のほか家族も対象に含まれる。

低需要地域では25万ユーロを維持

昨年8月、ギリシャ政府は当時欧州で最低水準だった必要投資額を、高需要地域で50万ユーロ(約8100万円)へと倍増させた。外国人投資家の関心が低い地域では25万ユーロに据え置いた。

キリアコス・ミツォタキス首相は、議会で「家賃に著しい上昇圧力がかかっている全地域を対象に、投資基準額のさらなる引き上げを検討している」「国の主要な投資促進策であると同時に、地元市場を保護するための重要措置でもある」と説明し、超党派の支持を得た。

ギリシャで住宅購入ラッシュ

欧州では、ポルトガル、英国、アイルランド、モンテネグロ、モルドバ、ブルガリア、キプロスなどがゴールデンビザ制度の廃止・制限を決定。スペインでも廃止論が議論される中、投資家の関心と資金がギリシャに殺到している。ゴールデンビザを申請中の外国人は、中国人を中心に数千人に上る。

ギリシャ銀行(中央銀行)の報告書によると、ゴールデンビザの発給数は昨年1年間だけで4倍に増加。最近の不動産取引のうち7%が同制度に関連している。不動産購入申請数も2022年上半期の1444件から、23年同期は4000件を超えた。

地元住民には良くない傾向

他国でも問題化したように、こうした購入ラッシュは住宅価格をつり上げ、地元住民には手が届かないほどの高騰を生んでいる。

投資家ビザ制度は、提供国における深刻な住宅危機の根源となっているのだ。住宅コストの上昇と地元住民への影響は、ポルトガル政府がゴールデンビザ制度を修正した主な理由の1つであり、今やギリシャの最低投資額引き上げの論拠となっている。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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