系外惑星の大気を調べる方法
系外惑星を見つける方法はいくつかあるが、大気を調べるのに最も一般的で見返りの多い方法は、惑星が主星の前を横切る恒星面通過(トランジット)を待つことだ。惑星のトランジット時には、惑星の大気を通り抜けた主星の光を望遠鏡で集めることができる。この光には、大気中にある化学物質の痕跡が含まれている。
今回の場合、VLTに搭載のESPRESSO分光器を用いて、タイロスによる主星のトランジットを始めから終わりまで通して観測した。ESPRESSOで集めた光を分析した結果、研究チームは鉄、ナトリウム、水素の痕跡を同定した。これらの元素の大気中の移動を追跡することにより、惑星大気の3つの層を流れる風の構造を明らかにすることに成功した。さらには、ジェット気流の直下でチタンが検出された。

地球類似惑星のための教訓
Nature誌の論文の共同執筆者で、スウェーデン・ルンド大学とESOに所属する博士課程学生のビビアーナ・プリノスは「これほど遠く離れた惑星の化学組成や気象パターンなどの詳細を調べることが可能になるとは、まさに衝撃的だ」と述べている。プリノスは、天文学誌Astronomy & Astrophysicsで発表された、チタンの痕跡を発見した今回の付随研究を主導した。
VLTは、タイロスのようなホットジュピターは調査できるが、より小型の地球類似惑星の大気に関する情報を引き出すことは不可能だ。チリのアタカマ砂漠に建設中のESOの超大型望遠鏡ELTや巨大マゼラン望遠鏡(GMT)などの最新の超大型地上望遠鏡がこの種の観測の助けになることを、科学者は期待している。プリノスは「今回の経験のおかげで、これまでは夢見るだけだった途方もないことを発見する日も間近であるように感じられる」と話している。
