宇宙

2025.02.24 09:15

月の重力で着陸船を加速 ispaceの月着陸船が月フライバイに成功

2025年2月15日、高度1万4439キロメートルからレジリエンスが撮影した月の写真(プレスリリースより)

2025年2月15日、高度1万4439キロメートルからレジリエンスが撮影した月の写真(プレスリリースより)

1月15日に打ち上げられ、民間企業として世界初の月面着陸と探査を目指して順調に飛行を続けているispace(アイスペース)の月着陸船「RESILIENCE」(レジリエンス)が、2月15日、日本時間午前7時43分、民間企業による月着陸船としては史上初となる「月フライバイ」を成功させた。

2023年、月面への軟着陸の寸前まで順調に飛行し、おしくも目的達成とならなかったミッション1に続き、その経験を踏まえて打ち上げられたミッション2のレジリエンスは、月面に着陸して安定的に通信を確立させ電力を確保するまでの10段階の「マイルストーン」のうち、5段階目となる月フライバイを完了させ、「深宇宙航行」に入った。

フライバイとは天体の近くをかすめ、その重力を利用して宇宙船を加速させる手法のこと。エネルギーをほとんど使わずに大きく加速できるメリットがある。太陽系外の探査を行うボイジャー2号は、太陽系の各惑星のフライバイを繰り返して、現在は時速約5万キロメートルに達している。レジリエンスの場合は、地球の周回軌道から月の周回軌道に移るための「遷移軌道」の航行に月フライバイを利用している。フライバイは、今後の宇宙輸送では重要な技術となるに違いない。

レジリエンスはこれから遷移軌道を進み、月から最大で110万キロメートルの距離に達したところで太陽の重力で引き戻され、5月初旬に月の周回軌道に乗る予定だ。ミッション1では、エンジンによる軌道制御を繰り返す通常航行による「深宇宙航行」を成功させている。このとき地球から約137万6000キロメートルという距離に到達し、世界でもっとも遠くに移動した世界初の民間宇宙船となった。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事