
2023年、月面への軟着陸の寸前まで順調に飛行し、おしくも目的達成とならなかったミッション1に続き、その経験を踏まえて打ち上げられたミッション2のレジリエンスは、月面に着陸して安定的に通信を確立させ電力を確保するまでの10段階の「マイルストーン」のうち、5段階目となる月フライバイを完了させ、「深宇宙航行」に入った。

フライバイとは天体の近くをかすめ、その重力を利用して宇宙船を加速させる手法のこと。エネルギーをほとんど使わずに大きく加速できるメリットがある。太陽系外の探査を行うボイジャー2号は、太陽系の各惑星のフライバイを繰り返して、現在は時速約5万キロメートルに達している。レジリエンスの場合は、地球の周回軌道から月の周回軌道に移るための「遷移軌道」の航行に月フライバイを利用している。フライバイは、今後の宇宙輸送では重要な技術となるに違いない。

レジリエンスはこれから遷移軌道を進み、月から最大で110万キロメートルの距離に達したところで太陽の重力で引き戻され、5月初旬に月の周回軌道に乗る予定だ。ミッション1では、エンジンによる軌道制御を繰り返す通常航行による「深宇宙航行」を成功させている。このとき地球から約137万6000キロメートルという距離に到達し、世界でもっとも遠くに移動した世界初の民間宇宙船となった。
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