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宇宙

2025.02.12 09:15

創業100年、アドバルーンの企業が宇宙産業に進出

プレスリリースより

プレスリリースより

このごろアドバルーンをすっかり見なくなった。見たことがない若い人も多いだろう。高層ビルが林立する以前は、銀座のデパートの屋上からポッカリと浮かぶアドバルーンは、陽気な昭和時代を象徴する光景のひとつだった。アドバルーンはもう役割を終えて隠居してしまったのか、と思いきや、大正10年創業の銀星アド社は、その技術を活かして現在もさまざまな分野でバルーン事業を展開している。その銀星アド社が、いよいよ宇宙産業に参入した。

福島県南相馬市は、スペースポート建設のための調査から運営までをサポートするASTRO GATEと連携協定を結び、スペースポート建設およびそれを中心とした宇宙産業の拠点作りを進めている。この1月9日にもASTRO GATEは、南相馬市での神奈川大学によるロケット打上を支援したばかりだ。

南相馬市は東側が海に面していることからロケットの打ち上げに都合がよく、スペースポート建設にはうってつけの立地なのだが、海辺の射場の課題として、打ち上げ時の安全を確保するための立ち入り禁止区域に船舶が入り込むという問題がある。2024年にも和歌山県の射場で、警戒区域に船舶が残っていたことでスペースワンのカイロスロケットが打ち上げを延期するという事件があったばかりだ。

その問題を回避するために起用されたのが、銀星アド社のバルーン(係留気球)だ。ASTRO GATEは、銀星アド社のバルーンに、成層圏を飛行する無人機から地球を観測するHAPSの開発を進めているSkySenceの技術を組み合わせて海域を監視する実証実験を行った。海抜500メートルの上空に観測気球を打ち上げ、相馬双葉漁業組あの協力で立ち入り禁止海域に見立てた海域に漁船を出してもらいその様子を監視したところ、みごと高解像度な映像の撮影に成功した。

この安価で効率的な方法は、今後、国内外のスペースポートの安全確保のソリューションとして確立させていくだけでなく、海難救助にも役立てていくということだ。この取り組みはKDDIの宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」の支援も受けているが、同社を通じて、この方式の事業化、国際展開が期待される。

ロケット打ち上げの日にスペースポートのまわりに監視用バルーンが上がり、それがアドバルーンをかねて地元商店の広告でも入ったなら、昭和レトロな平和でいい雰囲気が加わりそうだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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