北米

2025.02.26 08:00

15年間で4.5兆円の「公金吸い上げ」、マスクのビジネス帝国に高まる非難

( Kevin Lamarque - Pool/Getty Images)

マスクに問われる「利益相反」

トランプ政権は、バイデン政権が成立させたインフレ抑制法(IRA)と超党派インフラ法(BIL)による今後の補助金や資金配分をすべて撤廃しようとしており、ここにはカリフォルニア州の高速鉄道プロジェクト向けに用意された40億ドル(約6000億円)の連邦助成金も含まれる可能性がある。一方、マスクが率いるDOGEは、連邦機関全体の人員と予算の削減を急ピッチで進めている。

この取り組みは、マスクが2022年にその当時ツイッターと呼ばれたXを買収し、従業員の80%を解雇した際に見せた「先に撃ち、後で考える」アプローチをそのまま踏襲しているように見える。DOGEは、発足から数週間の間に、場当たり的な人員削減や予算の削減を行い、批判を浴びた。

ここには、国立衛生研究所(NIH)に対する研究助成金の停止や、国際開発庁(USAID)の予算と人員の削減、消費者金融保護局(CFPB)の閉鎖、内国歳入庁(IRS)の職員の削減などが含まれている。DOGEはまた、教育省の廃止を検討中で、貧困学区向けの教育資金を削減する可能性がある。

一方、マスクはDOGEの公の顔となり、トランプから称賛を受けているが、連邦検察官は先日、「マスクは正式にこのプロジェクトを指揮しておらず、政府の意思決定を行うための正式な権限を持っていない」と主張した。彼の正式な肩書は「無給の特別政府職員」とされている。しかし、その彼が率いるスペースXが政府との契約から恩恵を受ける一方で、DOGEを通じて財務省や社会保障庁、IRS、国防総省などの機関のデータベースに自由にアクセスできる状況は、懸念を引き起こしている。

「政府との契約を結んでいる人間に、その契約の決定権を与えるなんて、一体どういうことなんだ? これは違法でなければおかしい」と、陸軍元中将のラッセル・オナレはフォーブスに語った。

トランプ政権の関係者は、利益相反の可能性の報告をマスク自身に委ねていると述べている。しかし、このことは、オバマ政権時代に政府の倫理問題の専門家として活動した後に、トランプの1回目の弾劾裁判で下院司法委員会の共同弁護士を務めたブルッキングス研究所のアイゼンにとって、到底満足できるものではない。

「マスクは、透明性を維持していると主張するが、彼が関与する案件が、自身に利益誘導をしていないか、どのような予防措置が取られているのかを、私たちは確認できない」とアイゼンは述べている。

「政府の支援を受けて巨万の富を築いた富豪が、莫大な政治献金を行って特定の候補者を当選させる。そして、その富豪が政府の意思決定に関与する立場を与えられる。こうした状況は、寡頭制(少数の者が権力を握って行う独裁的な政治)と呼ばれるものだ。今、アメリカでは寡頭制が形作られつつあり、それはすべての国民が深刻に受け止めるべき問題だ」と、アイゼンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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