オーディオストックがあるから音楽を諦めずに済んだ
西尾:僕らのミッションは、音楽クリエイターが持続的な活動ができるような支援をすることです。金銭的なところでもちゃんと報われるような世界観を作りたいと思ってきました。それが少しずつ実現してきているので、まだまだこれからではありますが、もっと大きくしていきたいですね。藤田:クリエイター側からの喜びの声は届いていますか?
西尾:「オーディオストックの収益があって家が建てられました」とコメントをいただいたり、主婦の方に「今自分が音楽を諦めずに済んでいるのは、オーディオストックのプラットフォームがあるから」と言っていただいたりしています。インターネットで完結できるので、どこかに打ち合わせに行ったり、東京に行ったりする必要がないんですよね。
トップ層で稼いでいる方はもちろん専業のプロの方ばかりです。でも、色々な方がいらっしゃいますね。プロを目指している学生の方もいれば、普段サラリーマンをされている方もいる。週末音楽家のような方が、お小遣い程度入れば嬉しいとお話しされていることもありますし、自分の曲が有名な企業やYouTuberに使われて嬉しいといった自己実現的なお話も聞きますね。
山田:最初にお金をもらう瞬間って絶対震えるくらい嬉しいですよね。
西尾:僕たちもクリエイターのためにやらせてもらっているので、喜びのコメントをいただくと泣きそうになるくらい感動しますし、励みになります。

創業当時から変わらない思い ユーザーの声と課題感から生まれたサービス
山田:創業当初から、音楽家に還元する仕組みを作りたいと考えてブレずにやってきていたんですよね。西尾:音楽家の皆さんを応援していきたいという姿勢はもちろんありました。ですが、最初はインターネット上でコンテストをするサービスをやっていたんです。アマチュアやインディーズの方がなかなか注目を浴びるシーンがないので、コンテストやオーディションを開催していた。バンダイナムコさんと一緒にコンテストをして太鼓の達人に20曲くらい提供させていただいたりだとか。
それはそれでよかったものの、事業として継続することを考えると正直難しいと思いました。お金を出してまで音楽を集めたいというニーズはニッチですし、学生時代に考えたビジネスモデルだったのでやっぱりマーケットの発想がなく、思いの部分だけでやっていましたね。
事業が低迷してどうしようか考えている際に、音楽著作権の権利処理が難しいという敷居の高さを感じていたことを思い出しました。音楽著作権などの難しいことを気にせずに使えるようなサービスがあったら便利なのではと始めたのがオーディオストックです。創業して7年目くらいの時ですね。
VCから調達しているし、社員もいて自分の生活もかかっている。このままではやばいなという危機感で、とりあえずやれることを形にしようと必死でした。
藤田:アイデアの着想で参考にしたことはありましたか?
西尾:先ほどお話ししたように、音楽著作権が難しいと聞いていたこと。あとは、時代的にスマホアプリを個人開発者が作ってリリースできるようになったことで、カジュアルゲームがヒットしていた時期だったんですよね。音楽のニーズが今後増えるのではと、コンテストでは入賞した曲だけになってしまうところ、置いておくことで気に入った作品があれば買っていただけるんじゃないかなって。
山田:ユーザーの声と課題の組み合わせでできたんですね。