瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。
今回は、靴下の一大産地である兵庫県加古川市で、起毛肌着のベストセラー商品「もちはだ」シリーズを手がけるワシオ3代目社長の鷲尾 岳さんをゲストにお迎えした回をご紹介。業績改善に向けた紆余曲折の道のりから大手ECモール撤退の真相まで、リアルな事業承継の裏側をお届けします。
ほぼ倒産状態で家業に入社した理由
鷲尾:ワシオの鷲尾岳と申します。2024年1月に、3代目として代表取締役社長に就任したました。家業は一言で言うと、めちゃくちゃあったかい服を作ってます。自社ブランド「もちはだ」では、小物類やインナーからアウターまで色々と展開してます。今日は実際に体験してもらおうと実物を持ってきました。二人:(触って)肌触りが良いですね。
鷲尾:2016年、25歳の時に家業に入りましたが、その時点でほぼ倒産しているんですよ。いわゆる経営破綻の状態で、そこから再生させていこうと、いかに資金を使わずに利益を生み出すかを工夫してきました。そのなかでMakuakeでクラウドファンディングに挑戦したり、経費削減や徐々に収益増加の策をやってきましたが、コロナ禍でtoB向けのOEM商品を中心にボロボロに打撃を受けてしまい、再起しようとするなかで昨年の暖冬がひどくて、これ以上の改革を推し進めるために代替わりをしました。
今日はできるだけ、失敗談からの学びをたくさんお話できればと思っています。
藤田:まず聞きたいのは、なんで倒産寸前の状況で家業に入ったんですか?
鷲尾:大学卒業後、神戸の会社に就職して入社後すぐに中国での新規事業立ち上げを命じられ、2年ほどは中国にいました。半年に1回帰国して実家に滞在すると、両親が会社について色々と話しあっている訳ですよ。どうやら母親が訴えていることを父親が実行しないという構図で、会社も潰れて家庭崩壊すると思ったんです。僕は次男なので継ぐ気はなかったんですけど、長男が継がない選択をしたタイミングでもあり、立て直しにできることをしようと家業へ入ることを決めたんです。遠い未来に向けたミッションを考えた選択ではなく、目の前の問題に対して全力を注ごうという思いでした。