2025年2月25日発売の「Forbes JAPAN」4月号第二特集では、「地銀・信金ベストマッチング事例集」を掲載。地域経済のキープレイヤーである地方銀行や地域金融機関によるさまざまな協業のケーススタディを通して、地域から始まる新時代への希望のヒントを探っていく。
改正銀行法により、銀行が扱える業務が増えた。商品開発やブランディング支援、ECモール運営、地域商社などだ。「地方創生2.0」を打ち出す石破政権のもと、地域金融のあり方について、先駆者であるトップたちに話を聞いた。
「その地域にどういう地方銀行があるかによって、その地域の未来が決まる」とは、肥後銀行頭取の笠原慶久が、「地銀が生まれ変わる年」と題して、2021年の年頭あいさつで語ったものだ。この年、銀行法が改正され、これ以降、「銀行業高度化等会社」と呼ばれる子会社・関連会社が次々に設立された。
さらに今年、首相の石破 茂が施政方針演説で、「ハードではなくソフトの令和の日本列島改造」を宣言。地方創生のキープレイヤーとして、地域金融に「未来をつくれるか」が問われている。
金融庁企画市場局審議官の新発田龍史はこう言う。
「昔は我々金融当局が規制でガチガチに縛り、銀行に対して余計なことはしてくれるなという立場でした。でも、銀行が本来できることはお金を貸すことではなく、顧客の課題を解決すること。その手段としてお金があるのです。銀行法改正が伝えたかったメッセージとは(銀行業高度化等会社で)可能性が拡大したのだから、今、大きく変化できないと明暗を分けますよ、ということです」
チャレンジに対するスピード感で挙げられるのは、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)だろう。21世紀に入り、広域的かつ戦略的な金融再編を行うため、福岡銀行を子会社に置いたFFGを07年に設立。その後、国内初のデジタル銀行「みんなの銀行」、製造業専門商社として金属加工品の受発注などを行う「FFGインダストリーズ」、SDGsの普及、評価・分析、コンサルティングを行う「サステナブルスケール」など、従来型の銀行子会社にはない顧客支援型のビジネスを続々とつくっている。FFG社長の五島 久はこう言う。
「福岡銀行は01年に“不良債権問題との訣別”のために大幅な貸倒引当金を計上し、取引先の事業再生を進めました。その決断の記憶は、今も我々のなかに残っています。古くは石炭不況など地域と苦労を共にした歴史もあります。そんな経験から、地域の成長に向けてチャレンジしていくしかない、という組織風土が醸成されました。ただ、地域の成長はその地域だけで完結させることはなかなか難しい。サプライチェーンひとつとっても、たくさんのプレイヤーで成り立っている。九州全体で面として行動していこうと、九州・沖縄に加えて山口県の地方銀行13行の連携協定『Q-BASS』を発足させました」
地銀の存在意義を問うと、五島は、「一歩先を行く発想で、地域に真のゆたかさを提供すること」と定義した。
本当に融資でいいのか?
00年から組織改革を行い、今年、「社名から北國をなくすことも検討」と発表した北國フィナンシャルホールディングスは、銀行中心のイメージを転換する。(ForbesJAPAN2月25日発売号ではP8に同社社長である杖村修司のインタビューを掲載した)