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気候・環境

2025.02.15 16:30

行き過ぎた開発に「都市において大地に住み直す」視点を

Getty Images

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昨年末に発売したForbes JAPAN 2月号では、国内外の研究者・経営者・アーティストなど各界の第一人者に「25年のキーワード」を取材。京都府立大・准教授の松田法子は、「都市と大地」をキーワードに挙げた。


一面の草原や砂漠……大地と聞くとそうした広大な場所が目に浮かぶ。しかし、東京や大阪、ロンドンや上海といった都市の下にも大地は存在する。そして、人の暮らしとは関係なく、地球のリズムで動いている。

それを忘れたかのように人が土地を利用し尽くす都市では「巨大な災害が起きたときに想定外の被害に遭う」。そう警鐘を鳴らすのは、京都府立大学准教授の松田法子だ。

松田は、地球上での人類の歴史と未来を、建築や都市をはじめとする人の構築活動から考える「生環境構築史」という視点から研究している。

「都市は人工的な空間のようで、鉄やガラスなどすべての素材を大地から得ています。人は地球の無償の恵みによって生産や資本を拡大してきましたが、使った資源が循環するには、人間時間をはるかに超えた時間がかかる。より大きなスケールでの時間感覚と空間感覚で都市をつくることが、これからの地球との関係を考えるうえで重要です」

松田は人の生環境構築のなかでも、水との関係に注目している。人は太古から、水と陸が接する境界の高台に暮らしてきた。しかし特に戦後、川や海と人の生活空間の間はコンクリートで固められ、また安全神話ゆえに多数の洪水被害もおこってきた。

生環境構築史の観点からみると、災害は常に人の想定を超えてくる。2024年の能登半島地震や都心で頻発したゲリラ豪雨に「人間とは関係なく動く地球」のインパクトを実感した人も多いのではないだろうか。そうであれば、柳に風と受け流すように大地と同期するようなあり方や「都市のなかで自然がきちんと振る舞えるような開発」ができないかと松田は考える。

「開発地の経済収支の最大化ではなく、例えば流域単位での生態学的メリットから開発しない選択肢も考慮する。大地はつながっているので『ここだけ小さく取り組んでも意味がない』ということはなく、それが波及効果をもたらし得ます」。高層ビルなどに関しても「建築」ではなく、バラすことを前提につくる「解築」の研究に可能性をみている。

いち個人が都市でできることを聞くと、「まず歩くこと」だという。「見えない水の流れや大地の起伏、植生や湿度の違いといった“人間ではないもの”に触れながら歩くことで、大地に住み直す生活感覚に近づいていくのではないでしょうか」。


松田法子◎1978年生まれ。京都府立大学大学院生命環境科学研究科准教授。生環境構築史共同創始者。主著に、『変容する都市のゆくえ─複眼の都市論』(共著、文遊社)、『東京水辺散歩』(共編著、技術評論社)など。

文=鈴木奈央

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