【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

お金を「ダサく」できるか? 文化的停滞の背景と悩ましい実態

(右から)文筆家デイヴィッド・マークス、DESIGNTIDE TOKYO主催者/ログズ代表取締役 武田悠太、_______

(右から)文筆家デイヴィッド・マークス、DESIGNTIDE TOKYO主催者/ログズ代表取締役 武田悠太、_______

昨年秋、12年ぶりの開催が話題となったデザインイベント「DESIGNTIDE TOKYO 2024」。会場では国内外32組のプロダクトを見せながらも、広く「思考をトレードする場」というテーマのもと、連日さまざまなトークも開催された。

本記事では、『STATUS AND CULTURE』から読み解くラグジュアリーの生態系、というタイトルのもとで行われた、同書著者デイヴィッド・マークスと、DESIGNTIDE TOKYO主催者でログズ代表取締役の武田悠太による“文化的停滞”についての対話を紹介したい。


武田:このトークは、私がデーヴィッドさんの書籍『STATUS AND CULTURE』に感銘を受け、「ぜひ話してみたい」という思いから企画しました。

私は、日本にはクリエイティブな才能を持つ人材が多くいながら、なぜラグジュアリーが育たないのかと疑問に思っていました。ラグジュアリーとは何かと考えるにあたって多くのラグジュアリー論を読んでも、そのほとんどが富裕層をターゲットに、富裕層ではない人たちが考えた「お金持ちっぽい」「アートっぽい」商品を売ることをとりあげています。

ビジネスとしては、マスマーケットは「大人数×低単価」で、ラグジュアリーは「少人数×高単価」になるはず。そうなると顧客に向き合う積み重ねも大事なのではないかと考えるなかで手に取ったのが、『STATUS AND CULTURE』でした。



マークス:
書籍では、人々がステータスを欲し、そこから文化が生まれるという仮説を記しています。

まず、ステータスは、社会学的には社会的集団におけるヒエラルキーが高いか低いかに関する言葉です。もちろん、誰もが低いステータスにはなりたくない。できれば高くなりたいと考えています。例えば紹介制のレストランに入店できるなど、ステータスが高い方が合理的に権利や利益を得られると考えられています。

一方、カルチャーや文化について。私の定義では、文化は人と人の互いの期待になります。そして、ステータスによって文化が生まれたり変わったりします。

武田:ステータスとカルチャーが双方に作用しているという考えに目から鱗が落ちました。

マークス:続いて、ステータスとカルチャー、ラグジュアリーとの関係ですが、ラグジュアリーグッズはすべてステータスシンボルであり、ステータスシンボルでなければラグジュアリーグッズとは言えません。ただ、フェラーリやロレックスといったい高級ブランドに限らず、例えばでアメリカの農家の立派な工具もステータスシンボルになり得ます。

ステータスシンボルには、3つの条件があります。一つは「キャシェ」で、地位の高い個人や集団との関連性があり、一目でステータスが高いとわかること。2つ目は「シグナリングコスト」で、高価な時計、代々受け継がれてきたからこそ手にできる城など、獲得を妨げる障壁があること。

3つ目の条件は「アリバイ」です。いかにも「ほら、見て」と見せびらかしていたらステータスシンボルにはなりません。例えばフェラーリは「ドライブが趣味だから」、ロレックスは「時間が気になるから」など、所有している異なる動機が必要です。
次ページ > お金か、センスか、その両方か

文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

続きを読むには、会員登録(無料)が必要です

無料会員に登録すると、すべての記事が読み放題。
著者フォローなど便利な機能、限定プレゼントのご案内も!

会員の方はログイン

ForbesBrandVoice

人気記事