「次世代のEV電池」開発を支援
クリスタルパイの技術の応用範囲を拡大することを目指す温は、約3年前からEVバッテリーや太陽光パネル向けの新素材開発に向けた取り組みを開始した。「医薬品の開発と比べて、工業分野の素材の開発ははるかに単純だ。この分野では、何年もかかる臨床試験が不要で、目的の特性を達成すれば、すぐに商業的な成功が期待できる」と温は述べている。
彼が今注目しているのは、従来のシリコン素材の太陽光パネルよりも高いエネルギー効率を持つ、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造の素材を用いた太陽光電池の商業化の支援だ。科学者たちはこの素材を20年にわたって大量生産しようと試みてきたが、耐久性と安定性が低いため、それに苦戦している。
もう1つの分野は、次世代のEVバッテリーと呼ばれる全固体電池の商業化の支援だ。多くの自動車メーカーや電池メーカーが、全固体電池の大量生産を目指しているが、成功した企業はまだ存在しない。この電池の製造プロセスの難点の1つは、リチウムイオン溶液の固体版である「固体電解質」の性能を向上させることにある。
そんな中、クリスタルパイの技術がこれらの材料の商業化を可能にするのではないかと考える企業も出てきている。昨年8月に中国最大級の太陽光パネル材料メーカーの1つであるGCLテクノロジーの親会社は、ペロブスカイトやEVバッテリー向け材料の改良に向けて、クリスタルパイに1億3500万ドル(約205億円)以上を支払う契約を締結した。
さらに、1月にクリスタルパイは、マイクロソフトの中国支社と、創薬及び材料開発向けのAIモデルを共同開発するための戦略的パートナーシップを結んだ。
「私たちの技術は非常に独自性があり、付加価値の高い『スーパー医薬品』や『スーパー材料』を生み出すことができる。この会社は今まさに、爆発的成長の初期段階にいる」と温は語った。
(forbes.com 原文)