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欧州

2025.02.10 09:00

クルスク州の反攻、陰に「ウクライナ版SEALs」 状況は予断許さず

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戦線のほとんどの方面でウクライナ側の3倍のマンパワー(人的戦力)を配するロシア軍は、まず少人数の歩兵部隊を偵察に送り込むことが多い。その歩兵の大半が犠牲になるにせよ、一部はウクライナ側の防御の隙を探り出せると見込んでいるのだろう。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2023年5月の報告書で、ロシア軍の攻撃について「使い捨ての歩兵が最初に投入される」と解説している。「チームが防御射撃で撃滅されると、ロシア軍は同じ接近ルートから後続のチームを逐次送り込む。ウクライナ軍はこうした波状攻撃から、弾薬を消費し、防御陣地の位置を露呈し、人員を疲弊させながら、自陣を守り続けなくてはならない」

味方の人的戦力が敵の火力より長く持てば、ロシア側は弱体化したウクライナ側の陣地を制圧できる可能性が出てくる。

ウクライナ軍が同様の戦術を試みる場合、大きな違いは、ロシア軍が擁するような豊富な兵員を欠いているという点だ。そのため、ウクライナ軍は主攻撃に先立って敵陣を探るのに別の方策をとる必要がある。

ウクライナ側に優位性があるドローンが役立っているのは間違いない。ただ、ウクライナ軍による最も成功した攻撃の現場近くに特殊作戦チームがいることは、ロシア側のように自殺的ではない偵察活動を可能にしている別の優位性を示唆しているのかもしれない。

ファナセーエフカへの攻撃の開始地点近くには、ウクライナ特殊作戦軍の独立南部特殊作戦センター(第73海軍特殊任務センター)の部隊が展開している。米海軍特殊部隊SEALs(シールズ)のウクライナ版と言ってもいい同センターは、クルスク州で「敵軍に関する重要情報の収集」などに当たっていると明らかにしている
高度に訓練されたウクライナ特殊部隊員は、数週間前に契約書に署名したばかりのロシア兵よりも、危険な偵察任務で生き延びられる可能性が高い。偵察に特殊部隊の能力を活用することで、ウクライナ軍は攻撃時の損害をロシア軍の場合よりも抑えられているのかもしれない。

一貫して十分なマンパワーの確保に苦慮しているウクライナ軍にとって、損害の抑制は必要不可欠なことだ。一方で、まさにそうしたマンパワー不足が原因で、ウクライナ軍によるファナセーエフカ方面への反攻が頓挫する可能性もある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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