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2025.02.20 16:30

物流業界の真の課題「ファースト〜ミドルマイル」を解決する

Getty Images

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2024年は「物流の2024年問題」が話題になった。24年4月の働き方改革関連法でドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されたことで、ドライバー1人当たりの走行距離が短くなり、輸送能力が不足した問題である。データマネジメントの技術でこの問題の解消に向けたソリューションを提供しているのが、和田怜率いるシマントだ。

「この問題で特に注目されているのが、物流センターから消費者に荷物を届ける“ラストマイル”ですが、実はそれは全物流流通量の20%にすぎません。残りの80%を占める企業間物流を中心としたファースト〜ミドルマイル領域にこそ、大きな課題があります」
 
ファーストマイルとは「工場〜物流センター輸送」、ミドルマイルとは「物流センター間輸送」を指す。ここで発生している2024年問題とは“長距離輸送ができない”ということ。時間外労働の制限に対応するため中距離の経由便など現場の工夫で乗り切っているが、働き手が足りず苦しい現状がある。

和田によると、ファースト〜ミドルマイルの物流を支えているのは中小零細企業。1990年の物流二法改正を機に参入した企業も多く、現在その数は6万1000社近くにのぼる。それゆえ経営者もドライバーも高齢化が進み、廃業や離職も加速する。しかし過酷な労働のイメージから若年層の志望者は少なく、規制による労働環境の変化と人手不足によって窮地に追い込まれている。

「ドライバーや車両が確保できないという話は現場ですでに出ているので、2025年以降により大きな影響があると思います。ただ、多くの物流の現場の作業効率は30年近く全然変わっていないので、そこに改善の余地があると考えています」

物流の現場の基本的な仕事の流れはこうだ。荷主が輸送の依頼をかけると、運送会社は期日に合わせてその荷物の物量に対して必要な車両台数を見積もる。車両は自社車両やパートナー企業へも依頼をしながら、必要な車両台数を手配する。パートナー企業は、自社に割り当てられた実際の配送を請け負う。

一連の作業は、今も手書きの伝票や電話、FAXによる「手作業」で成り立っているところが多い。また、荷主が元請けとなる配送事業者に声をかけて車両を手配するケースもある。この場合元請けからパートナー企業へ、さらにはその先のパートナー企業へ展開する多重下請け構造になっており、これも同様に手作業の世界だ。

こうした受発注の構造に加えて、日用品や食品、工業製品などの業界ごとに発注体系が存在し、さらには同じカテゴリー、同じ企業内でさえ配送の現場間の連携がないのが実態だ。そのため、同じ元請けが受注しても、配送するドライバー同士の連携は生まれない。極端に言えば、同じ元請け企業から同じカテゴリーの商品を、同じ倉庫や小売店へ届ける依頼であっても、依頼主の企業が違えばそれぞれ別のドライバーが目的地へ運んでいる。
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文=尾田健太郎

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