米モルガン・スタンレーによると、eVTOLは40年に約230兆円規模に成長する巨大市場。SkyDriveは後発ながら、驚異の開発スピードでグローバル企業を猛追している。25年の大阪・関西万博では、同社を含む4社でデモフライトがお披露目される。

また、離着陸の容易さも魅力のひとつ。飛行機のような滑走路を必要としないため、空港がなくても離着陸が可能。ヘリコプターでも離着陸には一定の勾配が必要で、その範囲内に建築物や樹木があると離着陸ができない。
それらに比べてeVTOLは直径約50mのスペースがあれば良いといわれており、既存のヘリポートはもちろん、都市部のショッピングモールやオフィスビルの屋上なども離着陸場にできる。
コスト面でもメリットは大きい。離着陸が容易なため、道路や空港、ヘリポートといった交通インフラへの巨額投資が必要なくなるからだ。特に、経済発展にインフラ整備が追いついていない東南アジアやアフリカ地域からは、日常的な輸送・交通手段としての期待も寄せられているという。
さらに、シンプルな機体と動力構造のため、既存の航空機に比べて構成部品数が少なく、それによって製造やメンテナンスコストを抑えることもできる。将来的には自動運転も導入可能で、パイロットの人件費や育成費用も不要になる。
社会実装は26年目標
では、eVTOLの社会実装はいつになるのか。SkyDriveをはじめとして、eVTOLを開発するグローバル各社は、「2026年ごろの社会実装」を目指して開発を進めている。ドイツのLilium、Volocopter、イギリスのVertical Aerospaceといったヨーロッパ勢に加えて、中国のEHang、アメリカのJoby Aviation、Archerなどが、有人飛行に挑戦。いずれも民間航空機の安全性と環境適合性の基準を満たす型式証明を取得中の段階だ。
「社会実装のハードルのひとつが、型式証明の取得です。当社では、現在は基準を満たせるように多様なモデルスケールで飛行試験と開発を繰り返して精度向上にチャレンジしています。最短で26年には日本と米国で型式証明を取りたいと思っています」
SkyDriveは、社会実装に向けて公共交通機関との連携も進めている。24年8月にOsaka Metroと業務提携を結び、28年に大阪・森之宮に誕生する新駅での空飛ぶクルマの運航を目指している。
また、JR九州とも連携協定を結び、鉄道と空飛ぶクルマを組み合わせた移動体験をつくる。国内だけでなくグローバルでの実装も視野に入れ、23年1月には米国拠点を設置。米国のプライベートジェット運航会社SAIとグリーンビル・ダウンタウン空港とも覚書を締結し、同空港を起点とした空飛ぶクルマのユースケースの共同開発を行う。