「静岡魚共和国」とは? 静岡県内の水産加工会社が、川上から川中、川下までひとつにまとまった“共和国”を意味する。この共和国型を考案したのが、まん福ホールディングス(以下まん福HD)の創業者、加藤智治であり、資本の面で支えているのが地銀の清水銀行だ。共和国型により、深刻化する事業承継問題が解決し、各社の強みを活かしたシナジーを生み出している。しかしそもそも創業から間もない、ユニークな事業承継プラットフォームを展開するまん福HDに、なぜ清水銀行は融資を決断したのか、その真意を含め、静岡県の産業の未来像について清水銀行頭取岩山靖宏に話を聞いた。
2021年2月に創業したまん福HD。代表取締役社長の加藤が魚共和国を作るきっかけとなったのが、同年10月の焼津市にある水産加工会社「山佐食品」の事業承継だった。この時、株式譲受の融資とPMIの支援にあたったのが、現在の山佐食品のメインバンク、清水銀行だった。頭取の岩山靖宏は、まん福HDの代表取締役社長、加藤との出会いをこう振り返る。
「実はこういう案件は、当行にとっては初めてのケースでした。まん福HDは設立間もない企業でしたから。通常、事前情報と、実際に会って自分の目と耳で、経営者としてどういうビジョンを持っているかを見極めます。今回も、加藤社長の経歴などを踏まえた上で、掲げている「事業承継プラットフォーム」の話を聞き、すばらしいことにチャレンジしていると思いましたが、簡単にできることではありません。どれほどの覚悟を持っているのか、知っておきたいと思っていました」
一方、まん福HDの加藤は、清水銀行が取り組んでいる「越境ビジネスマッチング」に強い関心を持っていた。加藤が考えているエリア内での共和国構想との共通項を見出していたからだ。加藤は岩山にプレゼンテーションの機会を依頼し、顔を合わせることになった。
「実際に会ってみると、私が経営者として考えていることと、加藤さんが考えていることに大きな共通点がありました。ひとつはすでに加藤さんが取り組んでいる事業承継課題です。静岡県は、東部、中部、西部と異なる産業構造を持つ、全国の中でもポテンシャルの高いものづくりの県です。ただ課題は後継者がいないことです。」
岩山は続けて語る。
「私は、頭取になってまず現状把握を手掛け、その情報を事業承継担当部署(現ソリューション営業部)と共有させていました。加藤さんの掲げる事業承継のプラットフォームが、問題解決の一手になると思ったのです。もう1つが食を通じて地域を活性化したいというビジョンです。我々は2023年より『越境ビジネスマッチング』を掲げています。静岡県の鮮魚や海産物を山梨県や長野県に運び、長野県からは高原野菜などを直接静岡に持ってくるという取り組みですが、まさに加藤さんの共和国構想と同じです。これはご縁だと感じ、そこからまん福HDとの協業が進みました」
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