緑茶離れと国産紅茶の広がり
日本人の緑茶離れが言われて久しい。1990年代からは、ペットボトルのお茶の台頭によりさらに拍車がかかり、急須を使って淹れる緑茶の消費量は年々減少している。一方で注目されているのが国産紅茶だ。コロナ禍の2020年頃からは、“ヌン活”と言われるアフタヌーンティーの人気と相まって、紅茶への関心は確実に高まっている。
国内で流通する紅茶の1%にも満たない生産量ながらも、全国の産地数はここ10年で7倍に増えており、2023年には全47都道府県、1002カ所に広がった。
「国産紅茶は『和紅茶』や『地紅茶』『クラフト紅茶』などと呼ばれ、輸入紅茶に比べて苦味や渋味が少なく、まろやかな味わいで飲みやすいと言われています」と堀口は語る。
そんななか、鹿児島堀口製茶が2022年に「カクホリ紅茶べにふうき」の販売を開始すると、同年、フランスの「Japanese Tea Selection Paris」で金賞、翌年イギリスの「THE LEAFIES」で金賞、さらに国内の「日本茶AWARD」では2022年から3年連続プラチナ賞、2024年にはイギリス「Great Taste」の3つ星を獲得し、4つの名だたるコンテストで最高賞を受賞するという日本初の快挙を成し遂げた。特に「THE LEAFIES 」では、紅茶の本場、インド人やスリランカ人から高い評価を得たことは、堀口にとっても大きな自信に繋がったという。
和紅茶製造は、原点回帰
現在では玉露以外の各種緑茶生産をメインに行っている鹿児島堀口製茶が、和紅茶を作り始めたのは7年前だ。「1948年に創業した祖父が、最初に手掛けたのが実は紅茶でした。ただ当時、緑茶がメインの日本において、紅茶は馴染みがなく、さらにベトナムや中国などからの輸入紅茶が主流となっていく中、やむを得ず緑茶品種の生産へとシフトしていったという歴史があります」
転機となったのは2017年。堀口の幼少期に、祖父と父が作った「ウーロン紅茶」のパッケージを倉庫で発見したことだった。幼心に「ウーロン紅茶」の美味しさを記憶していた堀口は、もう一度復刻させたいとの思いから、オリジナル発酵茶の「ウーロン紅茶」を甦らせた。100%発酵させて作る紅茶と、10〜50%のウーロン茶の間の75%発酵で作るのが堀口製茶のウーロン紅茶だ。
この人気を契機に、発酵茶の可能性を見出した堀口製茶は、5年の歳月をかけて、鹿児島の緑茶を生かした和紅茶を開発。堀口は、世界三大銘茶の一つ、ダージリンのような香りと味を求め、緑茶やてん茶製造で使用している生葉冷蔵庫の利用を思い立つ。標高の高い高原地帯で萎凋(茶葉を広げて萎れさせる)されるダージリンと同じ環境を、人工的に作ることができると考えたからだ。
そこで、紅茶の製造において、茶葉を低温で萎凋してから発酵させるという独自の「低温萎凋製法」を編み出した。その結果、ダージリンのような色味と香りに加えて、べにふうき品種の柔らかな渋味が口に広がる「カクホリ紅茶べにふうき」が誕生した。