「うちは女性がすごく元気な会社なので、女性たちが中心になって、どうやったらお魚をもっと食べてもらえるだろうとか、いろいろ考えています。お魚の捌き方教室や料理教室とか。自分たちの人生に、自分たちで意味をつけて活動ができて、やっていることが世の中のためになったら、みんな多分嬉しいじゃないですか。そういうことを目指してやっている感じです」
「お魚生活すすめ隊」で地域貢献
会社の横には、淡路島を望む景色のよい砂浜があり、安岐氏はそこにコンテナハウスで小さなレストランを作りました。「お魚生活すすめ隊」の発信基地として、漁師から買った魚で料理や惣菜を作って出すほか、漁師と一緒に活動する拠点にもなっています。イベントでは、香川県水産課にタッチプールを出してもらい、子供がお魚と触れ合えるようにしたり、キッチンカーを呼んでマルシェをしたり、コンサートをしたりと、人を呼ぶさまざまな仕掛けを試みています。
「さぬき市の人口は減っていますが、イベントに外から来る人が増えて、リピーターになり、交流人口を増やすことにつなげたいと思っています」と安岐氏。魚を通して地域活性化に貢献することは、長年地域とのつながりを大切にしてきた会社として、ごく自然なことかもしれません。
魚のおいしさを多くの人に伝えたい

近年日本人は魚を食べなくなってきているといわれます。しかし、日本の魚食文化は古くから先人たちが培ってきた大切な文化。魚のおいしさを一人でも多くの人に伝え、この文化を次世代につないでいきたい。そんな想いが、代々海の恵みを生業としてきた安岐氏と安岐水産を動かす原動力です。
「よく考えてみると面白いなと思うんですけど、結局やっぱり、父がやったことと一緒のことをしようとしてるんですよね。後付けで気がついたんですけど、あ、結局同じことやってるやん、と思って」
水産資源を求めてさまざまな国へと飛び出していった父の姿。それを見ていたからこそ、安岐氏の心にも、海外ビジネスに向かう勇気や、新たなチャレンジを恐れない精神が芽生えたのかもしれません。
安岐 麗子◎1993年に父が創業した水産加工会社・安岐水産に入社。94年に安岐&カンパニーを創業、インドネシアジャカルタにある日本人向けスーパーマーケットへの食品輸出などを経て、2019年に父の後を継いで安岐水産代表取締役に就任。お魚生活すすめ隊を結成し、魚食の普及や海を守る活動を通じて瀬戸内の魅力を発信、地域の活性化にも取り組んでいる。
(本記事は、事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」の記事前編、後編を編集しています。)