2025年に発足する第二期トランプ政権の経済政策とその帰結はどのようなものになるだろうか。トランプ次期大統領は、選挙戦中に、すでに対中関税を60%に引き上げ、それ以外のすべての国に対して10%の関税を課す、と言ってきた。また、2024年11月26日には、就任初日に、メキシコ、カナダに対して25%の関税を課すという大統領令に署名すると発表した。これまでの演説等から判断する限り、第二期政権では、第一期政権の時よりもさらに関税を政策手段として活用することは確実だ。また、ロシアとウクライナの間の戦争も(おそらくウクライナへの支援終了で)すぐに終わらせる、と公言しており、国際政治への影響も大きくなる。
ただし、第一期トランプ政権からわかるように、関税は相手からの譲歩を引き出すための交渉手段であり、言っていることをそのまま実行するわけではないとする専門家も多い。二国間でアメリカに有利な条件を引き出すことができれば関税率を引き下げる、というシナリオだ。この場合、世界経済に大きな影響は出ないという楽観的な見方である。
数字が示す見事な「分断」
17-20年の第一期トランプ政権による対中制裁関税、そして22年に起きたロシアによるウクライナ侵攻は結果として西側諸国による対ロシア経済・金融制裁により、世界の貿易フローに大きな変化を生じさせた。ロシア制裁の結果、G7を中心とする西側諸国からロシアへの輸出入は大きく減少した。
侵攻前の21年と制裁後の23年を比べると、アメリカからロシアへの輸出は90.6%、輸入は84.6%の減少である。一方、アメリカから中国への輸出は21年から23年にかけて2.4%の減少、中国からの輸入は15.3%下落した。この間、G7の各国から、G7内の国との輸出入は11.9%増と、順調に伸びている。中国とロシアとの間の貿易も63.9%増と大きく伸びた。
中ロと西側諸国との分断は、両方と良好な関係を維持するいわゆるグローバル・サウス(以下G-South)諸国が一番の恩恵を受けた。西側諸国への輸出のハードルがあがってしまった中国・ロシアから安価な原油・ガス・製造業製品を輸入する一方、西側諸国への輸出も中国からの輸出減の穴埋めをするように増加したからである。