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北米

2025.02.04 15:30

トランプ「2.0」の経済的帰結:伊藤隆敏「格物致知」

Anna Moneymaker / Shutterstock.com

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Forbes JAPAN3月号・1月25日発売号掲載

第2期トランプ大統領(トランプ2.0)が就任する。就任前から、さまざまな政策を発言してきているが、本当にそれらを実行するのか、世界が注目している。

間違いなく実行するであろうことには次のようなことが考えられる。第一に、対中国、カナダ、メキシコに高関税を課し、そのほかのすべての国に対しては10%の関税を課すと脅す。第二に、パリ協定からの離脱とアメリカ国内における化石燃料の増産をする。第三に不法移民の強制送還を行う。第四に、ロシアのウクライナ侵略戦争を停戦させる。第五にNATO加盟国に対して軍事予算を増加するように要求する。これらは、実行される確率が高い。
 
トランプ2.0の第一の政策は高関税である。これまで、中国向け60%、メキシコ、カナダ向け25%、その他の国に対しては10%と宣言している。安全保障上の脅威に対抗する、関税収入をあげる、国内の労働者の職を輸入品から守る、などの目的があるといわれている。高関税は単なる脅しであって何かディールを引き出すための手段である、という見方もある。第1期トランプ政権(トランプ1.0)における対中制裁関税も、中国がアメリカ産の農産物を購入する約束をして引き下げてもらった。同じようなことがトランプ2.0でもおきるのだろうか。

私は、トランプ2.0の対中政策は高関税も含めて、トランプ1.0よりも厳しいものになるとみている。中国の対台湾への武力行使も排除しない態度、南シナ海の領有権主張と軍事基地化、アメリカ上空へ気球を飛ばすなどから、アメリカの上下両院、共和党、民主党を問わず、対中国については非常に厳しい姿勢を持っている。簡単に対中の融和的なディールを行うとは思えない。さらに、トランプ2.0では、関税を政府収入の重要な一部(あるいは国内の所得減税分を一部相殺)という考え方も台頭していて、簡単に高関税を止めないだろうと考えられる。

もちろん、高関税は、関税が付加された国内価格の上昇につながる。中国をはじめとする貿易相手国が報復関税を課せば、さらにアメリカの輸出産業に悪影響を及ぼす。高関税と報復関税は、アメリカ経済をスタグフレーション(インフレと不況)に導く可能性が高い。そして移民の強制送還は単純労働に依存する産業でコスト高につながる。国債増発による所得税減税は消費意欲を高めるが、総需要面からインフレ上昇につながる。インフレ率の上昇は、連邦準備制度(FRB)の金融政策を引き締めに転換させることになる。すでに、2025年の政策金利の引き下げ予想は、9月から12月にかけて、4回から2回に変更された。
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文=伊藤隆敏

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伊藤隆敏の格物致知

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