欧州

2025.01.19 08:00

新旅団「自壊」のウクライナが方針転換、新兵は既存旅団の補充に

Shutterstock.com

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ウクライナ陸軍第155独立機械化旅団の組織崩壊は、ウクライナの指導者たちに重要な教訓を与えたらしい。ロシアによる全面戦争が4年目に入ろうとするなか、その教訓は数的に劣勢のウクライナ軍が前線を維持していくのに役立つかもしれない。

今後、ウクライナの新たな動員兵は新編旅団の定員充足ではなく、既存旅団の補充に振り向けられるとのことだ。この方針転換について最初に報じたウクライナの従軍記者ユーリー・ブトゥソウによると、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領が直接指示したという。

フィンランドのアナリスト、ヨニ・アスコラは「ブトゥソウの報告どおりなら素晴らしいニュースだ」と書いている。「ウクライナがいま優先しなくてはならないのは、既存部隊の損失の補充だ。当面は新旅団の編成よりもそのほうがはるかに重要だ」

ウクライナ軍の既存旅団には経験豊富な指揮官・幕僚や高度な訓練を受けた多数の特技兵(ドローン操縦士、工兵、衛生兵など)はいても、歩兵は常に深刻に不足していることが多い。

これは、戦死者の大半を歩兵──「引き金を引く者(trigger-puller)」──が占めている結果だ。ウクライナ軍の旅団は、紙の上では2000人以上の将兵が所属し、1個400人規模の大隊数個分の歩兵を擁することになっているが、実際の歩兵数は1個大隊未満、つまり400人足らずのことが珍しくない。

多くの旅団で歩兵が不足していることを考えれば、戦争で疲弊したウクライナ軍指揮官たちが、第155機械化旅団のていたらくを非常に苦々しく見ていたであろうのは想像に難くない。同旅団はポーランドやフランス、ウクライナ西部で訓練を終えたあと、昨年12月後半から今年1月初めにかけて、ウクライナ東部ドネツク州の戦闘の中心地であるポクロウシク方面に投入され始めた。

しかし、統率が不十分で装備も不ぞろいだった第155機械化旅団は、ドイツ製レオパルト2戦車やフランス製カエサル自走榴弾砲を引っ提げてポクロウシク方面に到着するころには、すでに崩れ始めていた
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翻訳・編集=江戸伸禎

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