それでも、北朝鮮の軍人は「まともな戦士」だと注意を促すのは、ウクライナの軍人で映画監督のボロディミル・デムチェンコだ。とりわけ、その射撃練度は「非の打ちどころがない」とデムチェンコは評価している。
北朝鮮は昨年10月以降、朝鮮人民軍の第11軍団をクルスク州に派遣した。並行して、自国製の対戦車ミサイル車両や自走カノン砲、多連装ロケット砲、防空車両もロシアに送り込んだ。
第11軍団の1万2000人は、昨年8月以来クルスク州に侵攻しているウクライナ軍部隊に反撃しているロシア軍部隊約4万8000人に加勢した。2万人規模のウクライナ軍は、半年にわたる激戦を経て同州でなお650平方kmほどを保持している。
北朝鮮軍部隊は昨年12月に最初の攻撃を行い、雪原を徒歩で行進してウクライナ軍の陣地を襲撃した。地雷や大砲、ドローン(無人機)によってひどい損害を被りながらも、波状的に突撃を繰り返した末に、最前線の少なくとも1つの村から数的に劣勢のウクライナ軍守備隊を押し出した。
装甲車両による支援をあまり受けない歩兵先行の突撃は、なにも北朝鮮軍部隊に特有の戦術というわけではない。ウクライナ軍のドローンが四六時中いたるところを飛んでいるので、ロシア軍や北朝鮮軍の車両が掩蔽陣地から出て最前線まで行くのはほぼ不可能になっている。ロシアのある軍事ブロガーは、戦車をはじめとする装甲戦闘車両は「単純に、攻撃を開始するためのラインにたどり着けない」と説明している。その数km手間でドローンを被弾するからだ。
ロシア軍の指揮官には、相変わらず装甲車両による突撃を試みている者もいる。クルスク州に入っているウクライナ軍のドローン操縦士、Kriegsforscherは今週、ほかの観察者によって報告されていない破壊されたロシア軍車両が75両ほどあると数え上げている。ウクライナ側も、同様に未報告の破壊された車両が34両前後あるという。Kriegsforscherは、記録されていない分だけでこれほどの数の車両の損害が出ていることは「この地域の戦闘の激しさをよく物語っている」と書いている。