「私腹を肥やすウクライナ高官」という鉄板ネタ
こうした偽情報キャンペーンには共通点がある。それは、戦争が続くなかでクライナの高官が私腹を肥やしているという根拠のない信念に基づいていることだ。ロシアのプロパガンダ(宣伝)活動はこうして、国内で戦争への支持を促すとともに、西側諸国の人々にウクライナへの支援に疑念を抱かせようとしている。ニューヘイブン大のシュミットは「こうしたナラティブを信じやすい人たちは、これをウクライナ軍の腐敗や贅沢を示す新たな情報だと誤って受け取り、同時に、これらの架空の豪邸が焼け落ちるのを甘美な因果応報と感じるのでしょう」と説明する。「このナラティブに宗教的な側面がある点も重要です。正義の神が、まさに聖書的な火の災厄で悪人を罰するというわけですから」
ソーシャルメディア横断するオペレーション
ロシアが地上で勝利を達成できていないなかで、ロシアの「キーボード戦士」たちは引き続きクレムリンの手先として、ウクライナが腐敗していると受け止められるような「ニュース」をせっせと広めている。「真実をめぐる戦争:世界の3つの強国はどのようにオンランの現実の操作を競い合っているか」と題されたサイアブラの新たなレポートによると、ロシアは複数のソーシャルメディアを横断して偽アカウントを活用し、多数の投稿を緊密に同期させながら行っている。そのため、それらのプラットフォームすべてに同一のコンテンツが大量に、自動的に氾濫することになる。
こうしたキャンペーンはオーディエンスに対する影響を最大限に高める目的から、米国の週末に実施されることが少なくない。
サイアブラのブラミーは「民主主義をめぐる次の戦争は、戦車やミサイルで戦われるものではないでしょう。それはすでにソーシャルメディアフィードで戦われています」と述べ、こう警鐘を鳴らす。
「国家の支援を受ける偽情報はたんなるフェイクニュースではありません。それは、社会を分断し、国民の信頼を奪い、世界の権力のダイナミクスをつくり変えることを狙った『精密兵器』です。AIを駆使したナラティブは現実に即した話よりも45%拡散しやすい。本来、人々を結びつけるはずのアルゴリズムが、かつてないほど人々を分断させる結果をもたらしかねないのです」
(forbes.com 原文)