アジア

2025.01.15 10:30

ウクライナ侵攻を巡る北朝鮮、そして韓国の動き

北朝鮮の首都平壌で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)の訪問を歓迎する金正恩総書記。2024年6月19日撮影(Contributor/Getty Images)

北朝鮮の首都平壌で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)の訪問を歓迎する金正恩総書記。2024年6月19日撮影(Contributor/Getty Images)

ウクライナ侵攻でロシアを支援するため、北朝鮮が戦闘部隊を派遣したことは、多くの報道機関が伝えている。一方、それに対する韓国の動きについてはあまり報道されていない。本稿では、ウクライナ侵攻に対する北朝鮮と韓国の関与について概観する。

まず、北朝鮮に関しては、ロシアとの取り決めの詳細が公表されていないため、金正恩総書記がどのような見返りを受け取っているのかは不明だ。防衛技術なのか、資金なのか、投資なのか、もしくはこのうち複数を組み合わせて受け取っているのかもしれない。韓国の情報機関によると、北朝鮮はロシアから推定で兵士1人当たり月額2000ドル(約31万4000円)、合計で月に約2000万ドル(約31億4000万円)を受け取っているという。

どのような条件であれ、武器から兵士に至るまで、北朝鮮はロシアへの支援を強化している。北朝鮮がロシアに派兵している兵士の数については、米国防総省は1万人、韓国は1万1000人と推定している。残念なことに、北朝鮮軍も戦闘による死者を出し始めており、米政府によれば死傷者はすでに1000人を超えている。

北朝鮮がロシアの軍事行動に大きく貢献している一方で、韓国の反応についてはあまり報道されていない。韓国の元政府筋が筆者に語ったところによれば、ロシアが北朝鮮の関与を発表すると、韓国は即座に軍事情報チームをウクライナの首都キエフに派遣し、同国国防省に情報を提供したという。

ウクライナでの韓国の任務は、当初の状況説明から現地での積極的な情報収集や支援へと急速に拡大したが、内容についてはほとんど公表されていない。韓国は北大西洋条約機構(NATO)にも代表団を派遣してこの活動を後押ししているが、これは報告と外交的な働きかけを目的としている。

ウクライナ侵攻への韓国の関与には、現時点で以下の3つの異なる任務が含まれる。

1.通信の傍受、分析、処理

北朝鮮では戦場での通信のセキュリティは強固だと考えられているが、特に戦闘のさなかのような状況では誤作動や漏えいが生じることがある。個人の携帯電話や電子メール、ソーシャルメディア(SNS)への投稿など、私的な通信であっても、情報を収集する側にとっては役に立つことがある。これらの個人的な通信手段はいずれも北朝鮮では一般的ではないが、たった一例でもあれば、相手側に有益な情報を提供することにつながる。加えて、ウクライナにはロシアや占領地に住む市民による報道手段が発達している。
次ページ > ウクライナ侵攻での韓国の目標

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事