2.訓練、信条、指揮
金総書記にとって、自国軍は国内政治の道具に他ならない。北朝鮮から小規模な部隊がベトナムや中東に派遣されたことはあるものの、過去70年間戦争に参加していないため、同国の軍隊には現在、大規模な戦闘経験を持つ兵士はいない。一党独裁体制での権力と統制の道具として、北朝鮮軍は、信条、序列、服従を至上命題としている。こうした制度の下では、革新を起こすことや現行の制度に立ち向かうことで出世することはない。韓国の情報機関は、北朝鮮の内情に関する深い知識を持っている。3.戦争捕虜と脱北
これは非戦闘的な役割ではあるが、兵士と直接関わる必要があるため、3つの任務の中で恐らく最も機微なものと言えるだろう。捕虜となった北朝鮮兵に尋問できるのは韓国のみだが、これまでのところ、それに関する報告はない。北朝鮮は歴史的に戦争捕虜の帰還に寛容ではなかったため、捕虜となった北朝鮮兵には脱北に対する動機が内在している。金総書記はここでロシアのウラジーミル・プーチン大統領とともに大胆な行動に出た。アジアから欧州への軍事力投入としては、モンゴル帝国以来、最大規模となる。これは両首脳の英知によるものなのか、それとも自暴自棄による行動なのか? 戦争が優勢であれば傭兵は必要なく、社会がうまくいっていれば傭兵を雇うことはないという見方もある。だが、金総書記とプーチン大統領は、戦争を拡大させるというこの試みから何かを得るかもしれない。少なくとも、プーチン大統領は国内圧力の緩和を買って出た。しかし、北朝鮮にとって費用が効果を上回っていると金総書記が判断すれば、ロシアへの支援をこれ以上強化することはなくなるのではないだろうか。
ウクライナでの韓国の1つの目標は、北朝鮮がロシアに対する好意的な関与によって得たものより失ったものの方が大きいことを明らかにすることだ。もし北朝鮮が現在の部隊の派遣によって何らかの形で利益を得た、あるいは「勝利した」と考えれば、同国はこのような取り組みを他国でも行うようになる可能性がある。韓国がいつ、どのように北朝鮮への負担を増やすかはいまだ不明だ。
(forbes.com 原文)