日本のビジネスシーンからの強い要望
CEOのクテロフスキー氏は「日本はDeepLにとって大事なマーケットのひとつ」なのだと語る。DeepL翻訳は同社のルーツである欧州の多文化・多言語社会で活躍するビジネスパーソンの期待を背に受けて誕生しているが、外国語によるコミュニケーションを必要としながら「話すことは苦手」とする日本のビジネスシーンにも深く根づいた。DeepL Voiceは同社が11月13日にドイツ・ベルリンで開催した旗艦イベントの「DeepL Dialogues」で初披露されたサービスだが、ローンチに先行して実施した実証実験では「参加いただいた日本の企業から『さっそく導入したい』という強い要望を受けた」とクテロフスキー氏は反響を振り返る。
プロダクト開発を指揮するオズボーン氏は「DeepLはビジネスシーンに最適化したAI翻訳ツール」であると、その特徴を強調している。AI翻訳サービスの中には流行の生成AIチャットのインターフェースを活用するものや、モバイル端末にプリインストールされた形で無料提供するアプリなどDeepLのライバルは続々と増えている。オズボーン氏は「DeepLの強み」をあらためて次のように定義する。
「企業が独自のワークフローにスムーズに取り込める高いカスタマイズ性能を備えている。エンタープライズ向けのAI翻訳ツールとして洗練されていることがDeepLの何よりの強みだ。金融、法務などのビジネスの現場にも導入いただけるように高いセキュリティ性能も担保している。また導入後にLLM(言語モデル)の改良などアップデートが行われた場合にも、これらを速やかにユーザーに届けるプラットフォームがある」(オズボーン氏)
ビジネスミーティングの場面で、翻訳はその正確さだけでなく会話の流れを止めない「流ちょうなリズム感」が必要とされる。DeepL Voiceでは音声で入力された情報をテキストに変換しながら翻訳する。その際に「センテンスの徹頭徹尾を順番に翻訳するのではなく、ピリオドで一区切りされたセンテンス全体を把握してから、可能な限りリアルタイムに近い、精度の高い翻訳を提示できること」がAI翻訳の品質を決定付けるのだとオズボーン氏が説く。DeepL Voiceは使用時の心地よいリズム感を重視したことから、「音声からテキスト」に翻訳するという仕様に決まった。