軍事費などの財政支出の拡大はロシアのインフレを助長し、足元では8%超という高い水準にある。ロシア中央銀行は先月、主要政策金利を21%に引き上げた。産業投資の伸びも鈍化しているもようだ。
ロシア国内の工場は制裁の影響も受けているうえに、人手不足にも直面している。ロシア産業企業家同盟のアレクサンドル・ショーヒン会長は「特別軍事作戦(ウクライナに対する戦争)に人が回されており、この問題はすぐには解決できない」と述べている。
ロシアの通貨ルーブルが下落しているのは理由のないことではない。8月以降、ルーブルは対ドルで3割も価値を減じた。ルーブル安を受けてロシア中銀は27日、国内市場で外貨の購入停止にも追い込まれている。
エストニア国防省は2023年末、ウクライナは2025年にロシアを敗北させるには、2024年にロシア軍の人員10万人を死亡させるか重傷を負わせる必要があるとの試算を示していた。ウクライナ軍は今年、その3倍の30万人ほどのロシア軍の人員を死亡させるか重傷を負わせた可能性がある。
ウクライナは「勝利」に向けた条件を整えるために、ロシア軍に大量の死者を出させる状況を長引かせるべきだ。
ただ、ウクライナ軍も新兵の確保や甚大な人的損害に苦慮している。エコノミスト誌の推定では、ウクライナ軍の戦死者は最大10万人、戦傷者は40万人に達する。それも踏まえれば、ウクライナ側がとるべき方策とは、「領土を譲る代わりに、前進するロシア軍に多大な人的損害を与える」という2023年後半からやってきたことを、引き続き行っていくというものになるかもしれない。
この道筋に波乱要因があるとすれば、来年1月20日に就任するドナルド・トランプ次期米大統領だろう。
経験不足のディレッタントや権威主義体制寄りの陰謀論者を含む閣僚らに助言されるトランプは、ロシアに対する制裁を緩め、ウクライナへの米国の援助を打ち切り、ウクライナに自国に不利な和平を受け入れるよう圧力をかけるおそれがある。まさに、ロシアが損害を拡大させ、経済的に苦境に陥り、弱体化しているタイミングでだ。
(forbes.com 原文)