中東から日本に「健康診断を受けに行きたい」、が——
——:海外富裕層の旅行コーディネ-トを通じて、日本の観光事業にどんな課題感を持っていますか?
柳田氏:「旅行・観光開発ランキング」ではアメリカ、スペインに次ぎ世界3位にランクインしている日本ですが、「各国別 国際観光収入額ランキング」では26位と中位に位置している点にも、日本の観光事業における課題が潜んでいると考えます(三菱UFJ銀行調べ)。
海外富裕層の方々は、価値があると思う物や体験なら、予算はなくお金をかける傾向がありますが、彼らの需要を掴み切れていなくてもったいないと思うことが、私が旅行のコーディネートをしている中でも多々ありました。
例えば、彼らは口を揃えて、「外国人が多いところには行きたくない」と言います。
東京、京都、大阪、北海道などにインバウンドが集中してオーバーツーリズムとなっている地域がある反面、東北や北陸など、海外の方がほとんど来ていない素晴らしい秘境地もたくさんあります。
「CA地方創生プロジェクト」を通して、「知られざる日本の自然を体験したい」という海外富裕層と、「地元の魅力を海外の方にも知ってもらいたい」という地域のマッチングをしていきたいと思っています。
また、コロナ前のことですが、中東から日本に健康診断をしに行きたいという依頼がたくさんあって、都内のクリニックなどに問い合わせをしたのですが、国内に住んでいないとダメ、日本人じゃないとダメなど制約が多く、結局皆さん韓国に流れてしまいました。
待ち時間の問題など解決すべき課題はあるものの、彼らは日本の高い技術力を求めていて、まさに予算度外視、「幾らでも払う」と言っていたのにもったいないと思いました(特に中東は横繋がりが強いカルチャーで、お客様を1人見つければ、少なくとも10人は後に続きます)。
また、例えばですが、「アジア圏の医学研修生などに日本の医療機関を見学に来てもらうツアー」なども需要があるのではないかと思っています。
ほかに、東南アジアなど雪のない国の方は雪への憧れが強いので、北海道だけでなく、福島や山形など雪景色の綺麗な場所への誘致を積極的に行うことで、まだまだ需要を開拓できると思います。
とにかくインバウンドを「たくさん」呼べばよい、というのではなく、それぞれのタイプの求めるものを把握した上で、地域にあった戦略で、現地の方の暮らしにダメージを与えないインバウンド集客を行うことが、重要だと考えています。