そこで思い出されるのが筆者が航空会社で客室乗務員として勤務していた時代、とても優秀だったギャレー担当の同僚CAのことです。
「ギャレー」とは、空飛ぶキッチン、搭乗の際に必ず目にする、シルバーの扉がずらっと並んだ狭いスペースのこと。ここで機内食や機内サービスの準備がされます。
CAは大きく「キャビン担当」「ギャレー担当」に分かれ、その日のフライトを務めます。キャビン担当CAは主にキャビンに出て、お客様へのサービスを行うので、お客様からするとCA=キャビン担当CAのイメージが強いかもしれません。
でも、このキャビン担当CAが最大限のパフォーマンスを発揮できるように陰ながら支えているのがギャレー担当CAなのです。サービス時間が限られている羽田-伊丹線などの近距離の国内線や、機内食を提供する国際線では、このギャレイ担当CAの力量によって、その日のフライトの出来が左右されると言っても過言ではありません。
キャビン担当は新人CAでも務めることができますが、一番大変なギャレーをいきなり新人CAが担当するということは見たことがありません。
できるギャレー担当は「ギャレーに人を入れない」!
ギャレー担当CAの業務のほとんどはギャレー内で行われていて、その際はお客様から見えないようにカーテンを閉めているので、一体何をしているか謎に包まれていますよね。行っていることは「ドリンクや機内食提供の準備」なのでとても単純なことに感じますが、そこはいわばキャビンの司令塔のようなもの。
機内は収納場所が限られているので、ギャレーにはドリンクや機内食が入ったワゴン、食器、トレイなどのほか、その日のフライトで必要なあらゆるものが所狭しと収納されています。
そうなると必然的にギャレーにCAが集まってしまいます。
これをいかにギャレーに人が集まらないようにするか、というのがギャレー担当CAの腕の見せ所。
つまり、キャビン担当CAがギャレーに入らずにスムーズにサービスを提供できる環境を整えるということです。
例えばフライト中、機内食もドリンクも、全てギャレー内にあるので、お客様に頼まれものをしたCAは一度ギャレーに戻り、頼まれたものを準備してキャビンに出る、という流れになります。
ここでギャレーが整っていないと、キャビン担当者がお客様に頼まれたものを準備してキャビンに出るまで時間がかかってしまいます。そうなると狭いギャレーは混雑状態に。「あれはどこ?」「これ作っておいて」などキャビン担当CAからのリクエストに応えていると、ギャレー担当者は肝心の機内食の準備が全然進みません。
機内食の提供が遅れ、キャビン担当CAもそのような混乱の中でお客様に頼まれたものをお持ちするのが遅くなってしまったり、失念してしまったりといったミスも増えるという悪循環に繋がってしまいます。