何かひとつのテーマを徹底的に深く掘り下げながら探求する「単槓(ダンガン)」というメンタリティについても、本書の中で触れられている。オードリーは単槓であることと、生活にスラッシュを入れることの両立は可能であり、相反することがない理由について次のように説いている。
「人間には創造的な時間が必要です。そして創造するためには両方の要素が必要です。例えるならば、樹木は地中に深く根を張らないと育ちません。樹木が枝を伸ばしながら成長することは、人間が方々に好奇心を広げることにも似ています。大きな幹があってこそ枝葉が広がります。一方で、枝葉がないと樹木は十分な栄養が摂取できません。単槓であることと、生活にスラッシュを入れることをバランスよく実践することによって私たち創造性の枝葉を伸ばせるのです」
大人も「子どもに戻る時間」を見つけてほしい
本書を読めば、オードリーのように生産性の高い働き方や学び方を身につけることが誰にでもできるのだろうか。オードリーは次のように答えた。「子どもたちはとても旺盛な好奇心を持っています。世界をオープンな目で見ながら学び、変わる世界の未来を柔軟に想像する力があります。ところが既存の教育を受けて育つ私たちの多くは、大人になるまでに、あるいは社会に出て働き始めた頃に好奇心の扉を閉ざしてしまいます。社会的に規定されている各々の役割と仕事をこなすことも大事だからです」と彼女はいう。
「本書の中で、私は20パーセントの時間を自分のために使い、自分が置かれた仕事や社会の役割からいったん引き離すことの大切さに触れました。自分自身を優しく抱きしめて、心を解きほぐして強くすることが、大人の方々が『子どもに戻る時間』を見つけるために必要なのです。あるいは人と人とのつながりのなかで、好奇心の枝葉を広げることに時間を費やすることも有効だと思います」
オードリーは「既存のシステムの中でしがらみや息苦しさを感じている方や、目の前の困りごとを解決して新しいことに挑戦したいと考えている方に、本書を通してヒントを届けることができればとても嬉しい」と静かに微笑みかけるように語った。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
過去記事はこちら>>