個性や多様性を認めるところに「共好」が生まれる
昨今は共同体に参加する一人ひとりの個性とマイペースな働き方が尊重される時代だ。もしも今、私たちが共好を実践しながら、周囲からの同調を得られず孤立してしまった場合にはどうすればよいのだろうか。オードリーに問いかけてみた。「共好とは人々の独創的な振る舞いや、特別なものの考え方・感じ方を尊重することと相容れる考え方です。なぜならば、多様性や独特性を追求した先にもポジティブな成果があり、共好に到達できるからです。チームの中にユニークな人がいることを、私たちはポジティブに受けとめる。個性的なアイデアはイノベーションの原点、あるいはプロトタイピングの土台と成り得るからです」
本書の中でオードリーは「多様性が大切」であることを繰り返し説いている。多くの人が集まる環境の中でアイデアをぶつけ合い、共有すればその先に共好の可能性が見えてくる。オードリーはレナード・コーエンの楽曲『Anthem』から、「There is a crack, a crack in everything That's how the light gets in(すべての光は、ひび割れたところから射すものだ)」という歌詞を例に挙げて、困難と思われる物事から活路を見出すべきだと強調する。
人の生活を豊かにする「AI=Assistive Intelligence(支援的な知能)」
本書の前半では、オードリーが仕事や学びをいつも効果的に実践するために、絶えず実践してきた生活スタイルの詳細についても語られている。その習慣の一部は、例えば生成AIのように近年勢いよく台頭する先端テクノロジーの影響も受けながら少しずつ良い方向に変わっているようだ。「例えば、私は以前からデジタルデバイスの中毒性を避けるために、タッチスクリーンを操作する時には必ずタッチペンを使うようにしていました。その理由は本書の第5章で詳しく説明しています。現在はスクリーンをグレースケール表示にして、視覚から取り入れる情報量を抑えることで、指によるタッチスクリーン操作も取り入れています」