宇宙

2024.10.28 10:00

現実味をおびる2028年有人火星探査と、マスクがトランプを支持する理由

人類を火星に入植させるには打ち上げコストを大幅に圧縮する必要があるが、スターシップはそのために開発されたシステムであり、マスクのビジョンを要約すれば以下のようになる。

火星地表までの打ち上げコストは現在、1トン当たり約10億ドル(約1500億円。1ドル150円換算、以下同)を要しているが、火星に持続的な都市を建設するには少なくとも100万トンの設備が必要であり、そのコストは1000兆ドル(15京円)に達する。しかし、米国のGDPが29兆ドル(約4350兆円)であることを考えると、それは不可能な数字だ。

そこで私たちは打ち上げシステムを1000倍効率化させようとしている。実現すればコストは1兆ドル(約150兆円)まで圧縮でき、40年かけて分散すれば年間250億ドル(約3兆7500億円)未満に低減できる。こうしたプランであれば既存の経済を圧迫することなく、人類の活動の場を他惑星に広げ、生命の長期的な存続が可能になるだろう。

1000倍の効率化は実現可能か?

フライトテスト5の打ち上げシーン。轟音による衝撃波を緩和するため、打ち上げパッドの直下のプールには大量の水が散水される。その水質が環境汚染を引き起こす可能性があるとEPAが指摘。こうした過剰規制がマスクをトランプ支持に駆り立てたといえる(c)SpaceX

フライトテスト5の打ち上げシーン。轟音による衝撃波を緩和するため、打ち上げパッドの直下のプールには大量の水が散水される。その水質が環境汚染を引き起こす可能性があるとEPAが指摘。こうした過剰規制がマスクをトランプ支持に駆り立てたといえる(c)SpaceX

スターシップでは第1段と第2段をともに再利用することでコストを低減しようとしている。その効果が絶大であることは、同社のファルコン9によってすでに証明されている。

機体を再度地上に着陸させるには、通常であればランディングギアが必要になるが、ギアの重量が増すとペイロード(宇宙に届ける荷物)を減らすことになる。そのためスターシップからはランディングギアが取り除かれ、地上施設であるメカジラがその機能を補う。

また、ロケットはペイロードを地球周回軌道に乗せるために、ほとんどの燃料を消費してしまう。従来のロケットが搭載できるペイロードは、燃料を含むロケットの全質量に対して4%程度でしかない。

ただし、スターシップの場合は、タンカーと呼ばれる無人姉妹船を後から打ち上げ、軌道上で補給することを前提に設計されている。このオペレーションによってスターシップは、従来のロケットと比べて格段に重いペイロードを輸送できるようになる。
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編集=安井克至

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