宇宙

2024.10.28 10:00

現実味をおびる2028年有人火星探査と、マスクがトランプを支持する理由

(c)SpaceX

(c)SpaceX

巨大なブースターが「箸」でキャッチされるSFのようなシーンは、イーロン・マスクが主張する人類の火星入植を、「あり得る計画」として再認識させたに違いない。ただし、その開発スケジュールは大幅に遅延している。その一因である過剰規制を廃絶するため、マスクはトランプを支持。マスクを監視する規制当局を、逆に監視するポジションを得ることで、ロケットだけでなく、あらゆる事業を推し進めようとしている。

ロケット・キャッチャー「メカジラ」

スペースXは10月13日、超巨大打ち上げシステム「スターシップ」の5回目のフライトテストに臨んだ。その総全長は121m、質量は5000トンに達する。

第1段の全33基のエンジンが点火されると、機体は轟音とともに上昇。2分40秒後、高度69kmで第1段ブースターが切り離されると即座に反転し、発射地点に向けて降下、その速度はマッハ8.4(時速4400km)に達した。ランディングバーンによって降下速度がゼロになると「メカジラ」と呼ばれるタワーにホバリングしながら近づき、2本の巨大なアームに滑り込んで見事キャッチされた。

一方、宇宙船スターシップは、地上からの最大高度(遠地点)212kmに到達。準軌道(宇宙には達するが周回軌道には乗れない軌道)を航行しながら、1時間5分かけて地球を半周し、オーストラリア西方のインド洋海上に柔着水した。その様子は洋上ブイのカメラが捉えていることから、予定ポイントに着水したことがわかる。

コスト1000兆ドルを1兆ドルに圧縮

スターシップの第1段ブースター「スーパーヘビー」には、ラプターエンジンを33基搭載。メカジラに着陸収容される際には、中央の3基で機体姿勢と推力が制御される(c)SpaceX

スターシップの第1段ブースター「スーパーヘビー」には、ラプターエンジンを33基搭載。メカジラに着陸収容される際には、中央の3基で機体姿勢と推力が制御される(c)SpaceX

この飛行テストの成功を受けてマスクは、2025年には第1段ブースターだけでなく、第2段の宇宙船スターシップも「箸」でキャッチすることを示唆した。さらに2026年には無人のスターシップを火星に向けて打ち上げ、2028年にはヒトを火星に送り、20年後には火星地表に自立型都市を建設すると公言している。
次ページ > 1000倍の効率化は実現した打ち上げシステムは可能か?

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事