欧州

2024.10.13 09:00

ロシア無人攻撃機の残骸をウクライナが回収、怪しげな「ステルス技術」を解剖へ

F-117は完全に破壊されており、大規模なクリーンアップ(清掃)作戦が着手された。墜落現場の周囲300mのエリアは封鎖され、残骸の破片はすべて取り除かれた。埋もれていた破片はないか、土までふるいにかけられた。

墜落の痕跡を消し去ったあと、米空軍は過去に墜落事故を起こして20年間保管されていた戦闘機マクドネルF-101ブードゥーを現場に運び込み、バラバラにして周辺にばら撒いた。そして、地元ベイカーズフィールドのテレビ局ケロ-TVなどの取材班に立ち入りを許可し、偽の残骸を撮影させた。

F-117の存在が認められたのはようやく1988年になってのことで、2年後にその姿が明らかにされた。

マルヘアの搭乗機の墜落から13年後の1999年、F-117がセルビア軍によって撃墜されたとき、多くの識者は米空軍が機密保護のため残骸を爆撃すると予想した。しかし、20年ほど前に開発されたF-117のステルス技術はこの頃にはもう時代遅れとみなされ、残骸を破壊する努力はされなかった。かつては機密だったレーダー波吸収材(RAM)を使用した機体の一部は現在、ベオグラードの航空博物館に展示されている

ロシアのステルス技術

ステルス性は主に、レーダーの電波を反射する直線や鋭角を避けて機体を注意深く成形することで実現される。他方、表面のレーダー波の反射を最小限に抑えることも非常に重要になる。

初期のRAM、つまりステルス・コーティングのひとつは、金属粒子を含む「アイアン・ボール」と呼ばれる特殊な塗料だった。適切な種類、大きさ、形状の金属粒子は、電波を反射するのではなく、それを吸収して熱として放散させることができる。

ステルス機の表面には、レーダー波を閉じ込めて分散させるハニカム構造も採用されているかもしれない。

特定の角度からの特定の波長のレーダー波への可視性を最小限に抑えられる、素材と構造の効果的な組み合わせを見つけるというのは、いろいろな兼ね合いを考慮する必要がある複雑で難しい作業だ。原理的には「透明マント」をつくり出せる新材料のメタマテリアルは、現在のステルス性研究で広く用いられている。
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