3. 免疫力の低下
不幸な結婚によって生じる長期的なストレスは、免疫系の働きを弱める。炎症が起きやすくなり、身体の治癒力が低下するため、感染症や慢性疾患にかかりやすくなったり、ケガの回復が遅くなったりするのだ。2023年に精神神経内分泌学の学術誌Psychoneuroendocrinologyに発表された研究論文では、言い争いをしても解決せずに放置する、話し合いを避けるといった夫婦間の好ましくないコミュニケーションパターンと、そのパターンが心身の健康に及ぼす影響を検証した。
その結果、好ましくないコミュニケーションが多い夫婦は、傷の治りが遅く、頻繁に炎症を起こしていることが明らかになった。これは身体にストレスがかかっていることを示す明らかな兆候だ。また、女性は男性よりもこうした影響を受けやすかった。
この研究によれば、夫婦が十分にコミュニケーションを取っていないと、感情的ウェルビーイングが損なわれるだけではなく、身体的健康にも直接影響が出て、病気にかかりやすくなったり回復が遅れたりするという。
この論文の筆頭著者は前述したパデュー大学のシュラウトで、科学系ニュースサイト「サイエンス・デイリー」の記事によれば、「慢性的で日常的な否定要素と急性的な否定要素を経験し、さらにその両方が重なると、夫婦の感情、関係、免疫機能にとりわけ悪影響を及ぼすことがわかった」と説明している。
2019年発表の別の研究結果によると、結婚生活で抱え込むストレスと不幸は、胃腸の健康にも悪影響を及ぼし得る。結婚生活をめぐるストレスを抱えていると、腸内細菌のバランスが崩れ、リーキーガット症候群(腸粘膜で炎症が起き、その炎症性物質が血液に流れ出して全身に広がってしまう状態)などの原因となる。これにより、他の臓器で炎症が起きたり、肥満や心臓病などの慢性疾患リスクが上昇したりする。
夫婦間のストレスや対立は、食生活の乱れや睡眠不足、運動不足といった不健康な生活習慣にもつながる。その結果、体重の増加や血圧上昇、場合によっては体内での炎症の増加を引き起こし、老化が早まったり病気の罹患率が高まったりすることになる。
ストレスの多い結婚生活を送っていると、身体が常にストレス状態に置かれてバランスが損なわれるため、双方の健康がむしばまれることになりかねない。不幸な結婚は、喫煙や飲酒と同じくらい健康に悪影響を及ぼすのだ。逆に、結婚生活の満足度を高めるよう努力をすれば、健康的に長生きできるかもしれない。
(forbes.com 原文)