サイエンス

2024.07.20 14:00

困難に直面した結婚生活、立ち直りのカギは「親密さ」と「共感」

Getty Images

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Personal Relationships誌に7月3日付で発表された最新の研究は、結婚生活の緊張から夫婦を守る要素について調べている。結婚生活の緊張や苦悩は、夫婦間の相違、経済的なプレッシャー、家事負担のバランス、近親者との関係、人生の大きな転機など、夫婦が直面するさまざまな困難から生じる。

研究チームは、結婚生活の緊張によって夫婦間に感情的な距離が生まれ、個々の感情的な体験が互いに影響し、関係全体に影響を及ぼすことを見いだした。残念ながら、心の中で嵐が巻き起こると、私たちはしばしば、支え合うことや、つながり続けることを忘れてしまう。

ただし、この研究結果は同時に、結婚生活の緊張から夫婦を守り、強固な絆を築くための2つの保護要因、つまり、「感情的な親密さ」と「互いへの共感」の存在も示唆している。感情的に満たされた結婚生活では、夫婦ともに、深い満足感、つながり、支えを経験している。

研究論文によれば、感情的に充実し、困難に直面しても立ち直ることができる結婚生活には、2つの兆候がある。

困難に直面しても、感情的な親密さを優先する

感情的な親密さには、夫婦間の深い親近感とつながりが含まれており、相互信頼や理解、感情の共有を特徴とする。夫婦それぞれが正直で、透明性があり、相手を支えてくれる、という確信があるのだ。

感情的な親密度が高い関係では、夫婦が互いに弱みを見せ、決めつけや冷笑を恐れることなく、心の奥底にある考えや感情、恐れや夢を分かち合おうとする。

論文には次のように書かれている。「結婚生活の緊張はしばしば、親密さの妨げになる。緊張を経験すると、夫婦関係における感情的に難しい側面に対処する能力が制限される可能性がある。つまり、相手の感情やニーズを理解してそれに応える、といった能力のことだ」

しかし、特に結婚生活の緊張に直面しているとき、夫婦がお互いに対して対応しよう、コミュニケーションを取ろう、という姿勢を持てば、夫婦の関係性はさらに深まる可能性がある。このような重要な場面で、夫婦が互いにどう接するかが、2人の未来を形づくる。

感情的に満たされた夫婦関係では、夫婦は互いに感情を共有しあう。また、困難のさなかでも、相手を避けたり批判したりしたくなる衝動と戦う。共有する経験や共通の価値観、そして、関係を維持するという、より大きな目標に焦点を当てることで、感情的な親密さを時間をかけて構築あるいは再構築するのだ。

そのような夫婦は、一緒に充実した時間を過ごし、有意義な会話や新しい活動を行い、愛情、気遣い、感謝を示し続ける。相手に対して、どのような状況であっても、2人の絆が第一であり、常に互いが信頼しあえることを示す

共感を大切にする

共感とは、他の人の心の状態や視点を認識・理解し、思いやる能力のことだ。研究チームは、共感こそが感情的な親密さを高め、絆を強固にする夫婦関係の貴重なリソースだと示唆している。

共感には、主に2つのタイプがある。

1)認知的共感:認知的共感とは、必ずしも感情を共有することなく、他の人が考えていることや感じていることを理解する知的能力のことだ。例えば、「状況に手一杯になっているようだね」などと声を掛けることもそうだ。研究チームはこのタイプの共感について、特に感情的な親密さの維持に役立つと示唆している。

2)情動的共感:
情動的共感とは、他者の感情的な体験を共有し、その感情に心から共鳴することで、慰めや支えを提供することだ。例えば、「あなたがどれほど傷ついたかを知って、本当に悲しい気持ちになった」などと声を掛けることなどだ。
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翻訳=米井香織/ガリレオ

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