増え続けるメガコンステレーション
メガコンステレーションの打ち上げ状況を追跡している天文学者ジョナサン・マクドウェルのウェブサイトによると、本記事執筆時点でスペースXが地球低軌道上に配備しているスターリンク衛星は計6413基。その約3分の1が第2世代だ。しかし、同社にはスターリンクを4万2000基体制に拡大する計画がある。そして、低軌道衛星を利用して地球上のあらゆる場所にブロードバンド接続を提供しようと試みている企業は、スペースXだけではない。欧州のEutelsat OneWeb(ユーテルサットワンウェブ)や米アマゾンのプロジェクト・カイパーなどが後に続いている。
10年後には10万基の衛星が地球低軌道を周回している可能性があると研究者らは予測しており、こうした地球に近い衛星からの電磁放射が増加すれば、電波天文学にとって深刻な脅威となる。
迫りくる「人類の転換点」
今年7月に行われた今回の研究では、家庭用ラジオで一般的に使用されているFM放送帯域の上下の周波数のみを対象に観測を実施し、第1世代と第2世代のスターリンク衛星ほぼすべてからUEMRを検出した。検出された電磁放射の強度の推定値は、「意図的な電磁放射」に対して定められた国際的な電波干渉規制の基準値を上回るという。研究チームは、電波天文学の尊厳を守るためには衛星からのUEMRを対象に、より厳格な規制をただちに設けるべきだと結論付けている。
世界最大の電波望遠鏡を造る国際共同プロジェクト「SKA(スクエア・キロメートル・アレイ)計画」の事業母体で英国に本部のあるSKA天文台(SKAO)のフェデリコ・ディ・ブルーノは、「人類は明らかに転換点を迎えつつあり、地球から宇宙探査を行う『窓』である空を守るため行動を起こす必要がある」と主張。「人工衛星会社は、UEMRを発生させていることに関心がない。UEMRを最小限に抑えることも、持続可能な宇宙政策の優先課題とすべきだ」「スターリンクは地球低軌道上に展開する唯一の大手企業ではないが、この分野でも標準化をリードできる機会を有している」と訴えた。
電波天文学を救うには
産業界と天文学者がとれる協力体制の好例として、研究チームは欧州屈指の人口密度を抱えるオランダ国内に多くの基地局をもつLOFARそのものを挙げている。ASTRONのデンプシー所長は、「LOFARが稼働を始めて10年以上が経つが、当初は電波干渉によりすぐに観測が困難になるだろうと言われていた。規制による支援と、産業界との生産的な協力体制によって、1000件を超える緩和策が導入され、全国の団体、企業、インフラ施設、政府・行政機関、個人との協力のもとで実施されている」と説明した。
(forbes.com 原文)