「バーナードb」と呼ばれるこの惑星は、天球上の固有運動(見かけの動き)が最も大きい恒星の1つとして知られるバーナード星の周りを公転している。見かけの動きが大きいのは、太陽系に非常に近いからだ。これより近い恒星は、約4.1光年の距離にある三重連星のケンタウルス座アルファ星系だけだ。この星系で地球に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリを公転する惑星が、2016年に発見されている。
系外惑星バーナードb
バーナードbと主星との距離は、水星太陽間の距離の20分の1ほどだ。主星のバーナード星は、地球に最も近い単一星として何十年も研究が続けられており、2018年にも示唆された惑星の存在が今回、南米チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いた観測で裏づけられた。天文学誌Astronomy & Astrophysicsに掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、2019~2023年の5年間におよぶ観測によってついにバーナードbの存在が確認されたという。論文の筆頭執筆者で、スペイン・カナリア天体物理学研究所の研究者のホナイ・ゴンザレス・エルナンデスは「たとえ長い時間を要したとしても、何かを見つけられるという確信を常に持っていた」と語っている。生命には高温すぎる
バーナード星は、低質量で低温の赤色矮星だ。赤色矮星は、天の川銀河(銀河系)に属する恒星全体の約70%を占めており、非常に暗いため、肉眼では見えない。研究チームは当初、惑星表面に液体水が存在できる温度の領域である「ハビタブルゾーン」に重点を置いた。だが、探索の結果、それよりもずっと主星の近くに行き着くことになった。「バーナードbは、知られている中で最も質量の小さい太陽系外惑星の1つであり、地球よりも小さい質量を持つことがわかっている数少ない系外惑星の1つだ」と、ゴンザレス・エルナンデスは説明。「だが、主星に近すぎて、ハビタブルゾーンよりも近くにあり、たとえ主星の表面温度が太陽より約2500度低いとしても、高温すぎるので表面に液体の水を保持できない」と続けた。水は生命にとって不可欠と考えられているため、バーナードbに生命はいないということだ。