アート

2024.10.19 15:00

文化の交差点としてのアートフェア、Tokyo Gendaiの場合|今月のアートな数字

昨年に続き、社会課題をテーマにしたプログラム“Tsubomi ‘Flower Bud’”も開催。今年は国籍や世代の異なる女性アーティスト4人にスポットライトを当てた展示を行った。

昨年に続き、社会課題をテーマにしたプログラム“Tsubomi ‘Flower Bud’”も開催。今年は国籍や世代の異なる女性アーティスト4人にスポットライトを当てた展示を行った。

レンフリューは2000年代後半、ギャラリーが2つしかなかった香港でアートフェアを立ち上げた人物だ。このフェアはその後「アート・バーゼル香港」としてリブランドされ、金融ハブだった香港が文化のハブへと変革する一躍を担った。成功の秘訣はローカライズだ。

「例えば、当時はベルリンに勢いがありましたが、それをそのままもってきても意味がない。今ほど“多様性”が叫ばれる時代ではありませんでしたが、白人男性主義とされるアート界で独自のポジションを築くには、参加するギャラリーの地理的な多様性と品質が重要だと考えました」と振り返る。

開催地の文化に敬意をもち、ローカルとグローバルのバランスをとる。それはTokyo Gendaiでも同様だ。また日本に関しては、昨今の強力なインバウンド需要を受け、都内のギャラリーや美術館訪問、地域の文化をめぐるツアーなど、日本自体を体験できるプログラムをVIP集客の引きとしている。

「例えばフェアの前に山梨や箱根にお連れするのですが、意外なことに国内ゲストの参加も多くありました。こうしたツアーはコレクター同士の交流の場にもなっています」
ロバート・ロンゴ “Untitled (The Ecstasy of Saint Teresa, 1647–1652; After Bernini and WhitePeonies (detail)”。写真のように見えるが、 精巧に描かれた絵画作品だ。

ロバート・ロンゴ “Untitled (The Ecstasy of Saint Teresa, 1647–1652; After Bernini and WhitePeonies (detail)”。写真のように見えるが、 精巧に描かれた絵画作品だ。

アジアにコミットして約20年、そのアート市場は想像以上に成長しているという。経済成長やデジタル化、旅の安易化などにより、国際的なコレクターが増えたこと、その目利きが洗練されてきていることが理由として大きい。

「アジアにフェアが増えすぎているという指摘もありますが、世界人口の約半分がいる地域ですから、まだまだ成長できます。良いフェアとは、アートのみならず、人やアイデアなど文化が交差する場です。商業的な面と文化的な役割、その両輪を追求していきたいですね」
千住 博 “Waterfall on Colors, 2023”。昨年も出展したニューヨークに本拠地を置くSundaram Tagore Galleryは、千住 博の作品3点を37 万5000〜57万ドルで販売した。

千住 博 “Waterfall on Colors, 2023”。昨年も出展したニューヨークに本拠地を置くSundaram Tagore Galleryは、千住 博の作品3点を37万5000〜57万ドルで販売した。

文=鈴木奈央 書=根本充康

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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