「例えば、当時はベルリンに勢いがありましたが、それをそのままもってきても意味がない。今ほど“多様性”が叫ばれる時代ではありませんでしたが、白人男性主義とされるアート界で独自のポジションを築くには、参加するギャラリーの地理的な多様性と品質が重要だと考えました」と振り返る。
開催地の文化に敬意をもち、ローカルとグローバルのバランスをとる。それはTokyo Gendaiでも同様だ。また日本に関しては、昨今の強力なインバウンド需要を受け、都内のギャラリーや美術館訪問、地域の文化をめぐるツアーなど、日本自体を体験できるプログラムをVIP集客の引きとしている。
「例えばフェアの前に山梨や箱根にお連れするのですが、意外なことに国内ゲストの参加も多くありました。こうしたツアーはコレクター同士の交流の場にもなっています」
アジアにコミットして約20年、そのアート市場は想像以上に成長しているという。経済成長やデジタル化、旅の安易化などにより、国際的なコレクターが増えたこと、その目利きが洗練されてきていることが理由として大きい。
「アジアにフェアが増えすぎているという指摘もありますが、世界人口の約半分がいる地域ですから、まだまだ成長できます。良いフェアとは、アートのみならず、人やアイデアなど文化が交差する場です。商業的な面と文化的な役割、その両輪を追求していきたいですね」